投稿日:2023年4月2日
令和3年の民法改正により、相続開始から10年経過後の遺産分割については、原則として特別受益(生前贈与等財産の前渡しのこと)や寄与分が考慮されなくなることになりました。
この法改正が施行されるのは令和5年4月1日ですが、施行前に発生した相続にも適用されること、ご存知ですか?
現行遺産分割には期限がありません。何十年話し合っても構いませんし、話し合いが不調に終わり遺産分割が成立しなくても困るのは当事者だけですから、誰かから怒られることもありません。
いつまで経っても故人の預貯金を下ろすことができず、不動産の名義が故人のままになるだけです。建替えも売却もできませんが、誰かが固定資産税さえ払っていれば特段お咎めありません。
当事者はそれで構いませんが、未分割のまま長期化すると、空き家や放置された土地が増えたり、真の所有者が誰なのか分からなくなったり、周辺地域の方や行政等関係者が皆困ることになってしまいます。
そこで、遺産分割が長期化しないよう、「特別受益や寄与分を顧慮した遺産分割にするためには、原則として相続開始の時から10年以内に遺産分割を行わなければならない」と改正されたのです。
但し、例外があります。
相続開始の時から10年以内に、相続人が家庭裁判所へ遺産分割の請求をした時や、相続人全員が合意している場合は、引き続き10年経過後でも特別受益や寄与分を考慮した遺産分割をすることができます。
尚、この改正は、改正法が施行される令和5年4月1日前に発生している相続についても適用されます。
その場合、遺産分割に特別受益や寄与分が考慮される期限は、「相続開始の時から10年経過、又は施行時から5年経過、いずれか遅い時まで」とされていますので、例えば、施行時に既に相続開始から10年以上経過している場合は、施行時から5年以内であれば特別受益や寄与分を主張することができる(言い換えると、施行時から5年経過したら特別受益や寄与分を主張することができない)となります。
改正されても、相変わらず遺産分割には期限がありませんから、「そもそも特別受益や寄与分なんてない!」という方には関係ありませんが、「兄貴だけ生前贈与してもらってズルい」「寝たきりの親の面倒見たのに…」といったことが原因で遺産分割が長引いている方、早くしないとその主張ができなくなりますよ。
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