投稿日:2022年2月19日
令和4年2月16日(水)付の新聞(東京・首都圏版)「私たちの事業承継」に、『下島愛生堂薬局~養子縁組で株式取得~』の記事がありました。
記事では、実子がいないオーナーが後継者として甥と養子縁組を結び事業を承継した例について紹介しています。
「実子がいないオーナーが後継者として養子を迎える」、よくあるケースの一つと言えますが、実際に行う際は慎重に検討すべきと思います。
実子がいない場合、養子を迎えることにより兄弟姉妹甥姪まで広がる相続権を子(養子)に一本化できますので、自社株を含む相続財産の分散を防ぐことができます。
しかも、相続人が養子1人であれば遺産分割不要ですので、遺言を作成する必要もありません。もちろん争族になる可能性もありません。(本来の相続人から文句が出るかもしれませんが…。)
しかし、相続税は増税になる可能性があります。
例えば、相続人が兄弟姉妹甥姪が6人の場合、3,000万円+(600万円×6人)=6,600万円までは相続税がかかりませんし、仮に相続財産の評価額が基礎控除額6,600万円を超えたとしても、相続税は法定相続割合で相続したと仮定して計算するため、各相続人の累進税率が下がり、相続税総額が低くなります。
兄弟姉妹甥姪が負担する相続税は2割加算されるデメリットがありますが、兄弟姉妹甥姪の人数が多いのであれば、2割加算されるデメリットを差し引いても養子を迎える方が相続税総額が高くなってしまうのです。
要するに、「何を優先して考えるか」です。
養子縁組を結ばず、相続人を兄弟姉妹甥姪6人のままにしておけば相続税総額を低く抑えることができます。その上で、遺言書を作成し、後継者へ財産を遺贈すれば、兄弟姉妹甥姪には遺留分がありませんので、後継者へ財産を100%渡すことができます。
相続人ではない後継者は2割増しの相続税を納税することになりますが、兄弟姉妹甥姪6人が負担すべきであった相続税総額の2割増しに過ぎませんので、それほど高額になりません。
相続対策とは、遺産分割や相続税だけの問題ではなく、老後の面倒や財産管理等の問題もありますので、養子縁組を結び親族として全てを任せる方法もあるでしょう。
相続には正解はありません。
対策を検討する場合、色々な角度からメリ・デメを検証し、優先すべき項目を整理し、確実かつなるべく簡単な分かり易い方法を選択すべきですね。
© 2014-2024 YOSHIZAWA INHERITANCE OFFICE