投稿日:2024年5月1日
相続の現場で争いの原因となることの一つに、「特別受益」と「寄与分」があります。
どちらも遺産分割の際に揉める原因となりますので、どのような制度なのか、どうしたら良いのか、しっかり確認しておきましょう。
特別受益とは、民法903条に定められている「相続人間の公平を保つための法律」で、生前贈与など「財産の前渡し」のことと考えると理解しやすいと思います。生前に被相続人から財産をもらっていた場合、遺産分割や遺留分を話し合う際はそれを考慮しましょうという制度です。
寄与分とは、民法904条の2に定められており、相続人が被相続人の財産の維持又は増加について多大な貢献をした場合、それを考慮し遺産分割を話し合いましょうという制度です。
いずれも相続人にだけ認められている制度ですので、例えば、孫が祖父母から贈与を受けていた、長男の嫁が義父の面倒を見ていた等、相続人ではない親族には適用がありません。
特別受益は生前に財産をもらっていた場合の話しですので、その価値を金銭に置き換えるのが(比較的)容易です。いつもらったのか、何をもらったのかが分かれば、現在価値に置き換える計算がし易いからです。
一方、寄与分は、①被相続人の事業に関する労務の提供又は②財産上の給付、③被相続人の療養看護その他の方法により「被相続人の財産の維持又は増加」について特別の寄与(多大な貢献)があったどうかの話しですので、①や③の役務提供の場合、その価値を金銭に置き換えるのが難しいといった問題があります。
更に、寄与分における「療養看護」について、親の面倒を見たことが「扶養」なのか「寄与分」なのかその判断が難しいという問題もあります。常識的な扶養義務を超える著しい貢献があって初めて寄与分と認められますので、親と同居して面倒を見た程度では寄与分とは認められないのです。
このような争いを避けるためには、やはり遺言が効果的です。
遺言に「長男に贈与した財産の持戻しを免除する」と書いておけば、長男への生前贈与を遺産分割の対象から外すことができますし、面倒を見てくれた長男に多くの材差を相続させる旨の遺言を作成しておけば気持ちが伝わります。
もちろん例外もありますし、遺言では解決できないこともあります。
「特別受益(=財産の前渡し)」や「寄与分(扶養を超えた多大な貢献)」がある方は、早目に専門家に相談して下さい。
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