投稿日:2018年4月4日
40年振りに大改正が予定されている民法(相続関係)改正。
数ある改正項目の中で、僕が注目しているのは
『遺留分の基礎財産に含める贈与(特別受益)の範囲を、相続開始前の10年間に限定する』です。
遺留分の対象となる財産は、<相続発生時の財産>と思っている方、多いのではないでしょうか。
違います。
遺留分の対象となる財産は、①被相続人が死亡時に有していた財産に、②生前に贈与等した財産を加えた財産になります。
この生前に贈与等した財産、つまり前渡ししていた財産のことを「特別受益」と言います。
現行では、何十年も前に行った贈与も特別受益であれば遺留分の対象財産に加えられるため、請求する相続人にとって昔の贈与を調べる負担が重荷となっていました。
しかし、今回の改正により、加えられる財産は『相続開始前10年間』のみになります。
例えば、長男が会社を継ぐことが決まっているため、生前、父が長男へ自社株をすべて贈与したとします。
父が死亡し、長男に贈与した自社株以外に財産がなかった場合、長男以外の相続人は長男に対し遺留分減殺請求権を行使することが出来ます。
請求されてしまうと、せっかく長男が会社の支配権を有し安定的に運営してきたのに、自社株の分散により不安定な運営基盤となってしまう可能性が生じます。
民法が改正された場合、父が長男へ自社株を贈与したのが死亡する10年より前であれば、長男以外の相続人が請求する遺留分の対象財産から自社株が外れることになり、自社株の分散を防ぐことが出来ます。
つまり、早い段階で事業の承継を進めておけば、争族による自社株の分散を防ぐことが出来るのです。
事業承継対策の実務に大きな影響を与える改正ですね。
平成30年度の税制改正で「取引相場のない株式等に係る納税猶予制度」が大幅に拡充&緩和されました。
そこに今回の民法改正を組み合わせると、事業承継に係る税負担と遺産分割、2つの大きな問題をクリアできることになります。
しっかり押さえておきましょう!
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