投稿日:2022年1月20日
年末に『どうなる⁉伝家の宝刀「総則6項」』と題し、「(通称)札幌事案」に対する国税庁の伝家の宝刀「総則6項」の適用可否を巡る裁判がついに最高裁までたどり着いた旨について書きました。
3月15日に開かれる口頭弁論を前に、徐々に最高裁の争点が見えてきました。
「(通称)札幌事案」とは、相続税対策として、90歳を超える札幌在住の高齢者が死亡する約3年前に銀行等から10億円を超える借金をして杉並と川崎にマンションをそれぞれ1棟ずつ取得し相続税をゼロにした事案です。
納税者(相続人)は「国税庁が定めた財産評価基本通達(以下「通達」といいます)に則り財産を評価しているのだから問題ない」と主張していますが、
国税は「通達評価に馴染まない(著しく不適当)特別な事情があるのだから時価(鑑定評価)で評価すべきである」と主張し、
国税不服審判所、地裁、高裁はすべて国税を支持しました。
これを受け、納税者は最高裁へ上告及び上告受理申立てを行ったのですが、上告については棄却され、上告受理申立てが通りました。
【上告提起と上告受理申立て】
高等裁判所の控訴事件の判決(以下、これを「原判決」といいます。)に対して不服がある場合には、その理由に応じて「上告提起」と「上告受理申立て」という二つの手続を取ることができます。
「上告提起」は、原判決について憲法違反や法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由が存在することを理由とする場合の不服申立ての方法で、「上告受理申立て」は、原判決について判例違反その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むことを理由とする場合の不服申立ての方法です。
(出所:裁判所ホームページより、下線は筆者)
今回の最高裁は「上告受理申立て」ですから、高裁判決の判決に何らかの問題があることを示しています。
最高裁が納税者及び国税に求めた論点によると、争点は次の2つに絞られているようです。
①相続税法22条(相続財産の評価は時価である)違反があるか
②総則6項の適用が平等取扱いの原則に違反するか
最高裁で期日が開かれる(口頭弁論が行われる)=原判決が見直される可能性が高い、と言うことです。
もし最高裁が国税庁の伝家の宝刀「総則6項」適用を否認する判断を下した場合、これは課税実務に相当大きな影響を与えます。(間違いなく街は大騒ぎです。)
最高裁の判断に注目したいと思います。
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