投稿日:2022年6月1日
令和6年4月1日に施行される「相続等を原因とした不動産の所有権移転登記(相続登記)の義務化」。
注意が必要なのは、施行日前に発生した相続等についても義務化の対象となり、理由なくこれを怠ると10万円以下の過料に処せらること。この遡及適用についてはだいぶ浸透してきました。
先日、施行日まであと2年近くあると安心せず、早目に動いた方が得策と言う事案に遭遇しました。
Aさんが耕作している田畑の名義は死亡した祖父のままとなっています。Aさんは長く続く農家で、長男が田畑を相続する家督相続方式で先祖代々の地所を守ってきました。
しかし、法改正が間近であることから、自身名義に登記しようとしたところ、思わぬ落とし穴に陥ったのです。
Aさんの両親の相続人はAさんと姉、妹の計3人でした。ここは仲が良く、手続きに支障ありませんでした。
次に、Aさんの父は7人弟妹でした。つまり、Aさんの祖父母の相続人はAさんの父(故人)を含め7人兄妹となります。
調べた所、Aさんの父の兄弟姉妹には、
①施設に入り判断能力がない
②所在不明
③Aさんの祖父より先に死亡しており、当時代襲相続人(祖父の孫)が3人いたが、うち1人が3年前に死亡している
④死亡しており、その配偶者が認知症
⑤家督相続を認めない
等、色々な状況の方がいたのです。
①施設に入り判断能力がない
⇒ 家庭裁判所に法定後見を申し立て、後見人(及び後見監督人)と協議しなければならない。
②所在不明
⇒ 人探しから始めなければならない。
③Aさんの祖父より先に死亡しており、当時代襲相続人(祖父の孫)が3人いたが、うち1人が3年前に死亡している
⇒ 祖父の代襲相続人である孫2人の他、3年前に死亡した孫の配偶者や子と協議しなければならない。
④死亡しており、配偶者が認知症
⇒ 認知症の配偶者のために家庭裁判所に法定後見を申し立て、後見人(及び後見監督人)及びその子と協議しなければならない。
⑤家督相続を認めない
⇒ 話し合うしかない。
Aさんは、早く気付いて良かったと思う反面、相続登記を先送りしてしまったことを後悔していました。
相続登記に必要な人は相続人だけとは限りません。相続人が死亡してれば、その相続人が当事者になります。つまり、日頃付き合いのない遠縁の親戚が当事者として介在する可能性があるのです。しかもその数がネズミ算的に膨れ上がることも…。
「自分は大丈夫なのか」、今のうちに確認しておきましょう。
※写真は本文と一切関係ありません。
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