投稿日:2025年6月3日
令和5年度税制改正により、令和6年から相続時精算課税制度が大きく変わりました。
目玉は「年間110万円の基礎控除額の創設」及び「相続前加算」です。
暦年課税制度(いわゆる「110万円贈与」)の場合、相続開始前3年以内(令和13年からは7年以内)に行われた贈与は相続財産に加算されてしまう問題がありましたが、相続時精算課税制度を選択すれば、年間110万円までであれば贈与税がかからないだけなく、例え相続開始の直前に行われた贈与であっても相続財産に加算されません。
今後、相続税対策として相続時精算課税制度が活用される件数が増えていくと思われます。
ところが、相続時精算課税制度を選択した場合、良いことだけではなく、“落し穴”があること、ご存知ですか?
いくつかある落し穴のうち、今回は代表的なものを3つ紹介します。
1つ目は、期限後申告に特別控除(2500万円の非課税枠)は使えないこと。
期限内に申告するのを失念した場合、まだ特別控除2500万円の非課税枠に余裕があったとしても、2500万円の非課税枠を使うことができず、贈与価額×20%の贈与税(+加算税や延滞税)を払わなければいけません。
2つ目は、争族になり、他の相続人が贈与されている財産について調べようと国税に情報開示を求めても、開示されるのは相続税を計算するために必要な贈与税の課税価格の合計額だけであること。
贈与してもらったのは誰かは教えてくれますが、贈与された時期や、何を贈与してもらったのか(贈与財産の種類)を特定することはできませんので、遺留分を請求する場合や、特別受益について調べる場合は困ります。
贈与の詳細を調べようと国税に贈与税の申告書を見せてもらうためには、該当者からの委任状が必要になりますので、敵対している場合相手方から委任状はもらえないでしょうから、贈与税の申告書を見ることはできません。
その場合は、弁護士に相談し、法的な手続きを行うしかありません。
3つ目は、受贈者が贈与者(特定贈与者)より先に死亡した場合、二重課税となることです。
例えば、祖父が父へ相続時精算課税制度を選択し贈与した後、祖父よりも先に父が死亡した場合、父の相続人である子は、父が祖父から贈与してもらった財産について相続税を払います。(1回目の相続税)
その後祖父が死亡した場合、子(祖父から見たら孫)は代襲相続人として、父が祖父から贈与された財産を相続財産に加算し(持戻し)相続税を払います。(2回目の相続税)
つまり、同じ財産について2回相続税を払うことになってしまうのです。
相続時精算課税制度を活用する場合、このあたりのリスクを踏まえた上で検討するようにしましょう。
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