投稿日:2025年9月1日
令和7年8月24日(日)付の新聞に、『別荘地の価値 守るのは誰~「委託契約すら結んでいないのに」~恩恵と負担 問われた公平』の記事がありました。
密かにお気に入りの「揺れた天秤~法廷から~」シリーズ。
今回は、父から相続した行ったことも建物もない別荘地の周辺を頼んでもいないのに勝手に掃除され料金を請求された事案(管理費請求訴訟)が紹介されています。
この結末、ちょっと衝撃的…僕の常識では理解できません…。
事案概要は次の通り。
①令和元年に96歳で死亡した父が昭和52年に購入した栃木県那須塩原市の別荘地を息子が相続した。
②本土地上には建物がなく、息子は行ったことも、利用したこともなかった。
③ある日、息子宛に別荘地を管理している都内の不動産会社から「管理費を払え」と請求書が送られてきた。
④息子は父の時代から管理を委託した事実がなかったため無視していた所、不動産会社から「年間約4万円の管理費が5年間滞納しており、不当利得を得ている」と管理費の支払いを求め訴えられた。
管理費を請求した不動産会社は、別荘地内に専従の管理人を置き、本社から従業員を毎週派遣した上で道路脇の雑草刈りや落ち葉清掃、ごみの分別、街灯交換、朝夕の敷地内パトロール等を行っていたそうです。
ただし、管理委託契約を締結している人もいれば、締結していない人もいたようです。
頼んでもいないのに勝手に管理し費用を請求されることなんてあるの???
契約していないのに、払う必要ないでしょ!
と僕は思いました。
同じ不動産会社は別の所有者に対しも同様の訴訟を提起したところ、原審(東京高裁)では「管理業務が本件土地にどの程度の経済的影響を与えたのか不明であるため所有者が利益を受けたとは認められない」と管理費を支払う必要なしと判断された判決と、「管理による資産価値の維持・向上という恩恵を所有者がタダで享受していると認められる」と管理費を支払うよう命じた判決に分かれました。
論点が同じである2件の訴訟について、令和7年6月30日最高裁は「不動産会社による管理業務は別荘地全体に及んでおり(管理費を負担していない)所有者はこの利益を享受している(不当利得を得ている)」と、管理費を支払っている所有者との公平性を重視し、管理契約を締結していない所有者に管理費を支払うよう命じました。
*最高裁の判決はこちら
契約がないのに他者の支出によって利益を得ているとして返還を請求される問題のことを「押しつけ利得」というそうです。
こんなことあるのんだ…いい勉強になりました。
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