投稿日:2016年5月18日
先日個別相談に応じた事案。
相談者は高齢のお母様。
お子さんと一緒にいらっしゃいました。
相談事は、「お母様が実家から相続した田舎の不動産について」。
もう20年以上遊休化しているそうです。
※長いので、時間がある時にお読み下さい。
<お母様>
結婚して都内に出てくるまでずっと過ごした実家であり、両親の思い出がいっぱい詰まっているため、手放したくない。
家屋は古いが、愛着があるので取り壊されるのを見るのは嫌だ。
他人に貸すのも、土足で踏みにじられるようで嫌だ。
そもそも、他人に貸したら戻って来なくなってしまう。
子や孫が使ってくれたら良いのだが、誰も住まないし、別荘地でもないのでわざわざ行く用事もない。
たいした額ではないが、毎年の固定資産税が馬鹿らしいから、駐車場にしたらどうかと考えている。
<子>
自分達の代も、自分達の子(孫)の代も、使う予定は一切ない。
とは言え、大きな負担ではないので持っておいてもいいかなと思っている。
母方のお墓があり、時々お墓参りに行くので、その際状況を確認出来る。
幼い頃、祖父母と遊んだ思い出がある不動産だ。
手放すと親戚と疎遠になってしまう。
<当方>
お母様の土地ですから、好きにしたらいいんじゃないですか。
<お母様>
何もしないのも何か良くない気がするし、子供達は使ってくれないし、守らないといけないし…どうしたらいいでしょうか?
<当方>
一体、何の相談ですか?
背中を押して欲しいのですか?それとも、スペシャルな解決策があるとでも?
打ち出の小槌じゃないんですから、希望を全て叶えるスペシャルな解決方法なんてないですよ。
経済合理性や資産価値、譲渡税等の話でしたら多少助言出来ますが…。
もう一度言いますよ、お母様の不動産ですから、誰が何と言おうと好きにしたらいいと思います。
手放したくないなら、そのままの姿でお亡くなりになるまで持っていればいいじゃないですか。
過去の路線価の推移を見ると、この土地は平均年2%ずつ下落し続けています。
と言うことは、今の固定資産税評価から逆算すると、20年間で約600万円の資産価値下落ですね。
更に、年5万円の固定資産税の20年分、約100万円がキャッシュアウトしています。
加えて草刈り等の管理コストを考慮すると、この20年間でトータル800万円程度資産ロスがあったと考えられます。
もちろん、思い出は「プライスレス」ですから、お金だけの問題で片付けるのはどうかと思いますけど。
周辺の人口減少は歯止めが利きません。
多少周辺は宅地開発が進んでいますが、賃貸アパートや駐車場に力強い・持続的な需要があるとは思えません。
確信を得たいのであれば、地元不動産業者を数件回り、自分の目と耳で状況を確認して下さい。
仮に多少の需要があったとしても、将来賃料が上がることはまずないでしょう。
このまま老朽化した家屋を残しておくと、「空き家対策法」にひっかかる可能性もあります。
かと言って、家屋を取り壊し更地にした場合でも、不法投棄等管理責任から逃れることは出来ません。
どうしたいかは所有者であるお母様自身が考えることで、自分が決断できないからと言って、問題を次の世代に先送りするのは無責任だと思います。
「次の世代にも自分と同じような苦しみを味合わせたくない」と考えるなら、自分の代でケジメをつけるべきではないでしょうか。
決断できるのはお母様だけです。
不動産だって、放っておかれるより、誰かに使ってもらった方が喜ぶのではないでしょうか。
「土地は使ってなんぼ」だと思います。
持っているだけで何も使わない、資産価値も落ちていく、そこに何の意味があるのですか?
「思い出」と言われてしまったら、返す言葉はありません。
そこで相談は終了です。
後はお母様の好きにして下さい。
「先祖代々の土地を守っている」と言っても、20年間遊休化させ、それで守ったことになるのですか?
手放さなかったら、天国のご両親が「よくやった!」と褒めてくれるとでも?
正解なんてないですよ。
あるとしたら、お母様の決断そのものが正解です。
<お母様>
・・・・・・・・何か、心が晴れました。
今までとは違って、何となくですが、現実をしっかり受け止めないといけないと思いました。
色々な所に相談してきたのですが、ここまで親身に、ハッキリ言って下さる方はいませんでした。
心にグサっと刺さりました。
ここで相談は終了しました。
果たして、どのような結末になるのでしょうか。
僕にも分かりません。
あ~、「相続」って難しい!
一生懸命勉強しても、全然答えが見つからないや!
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