投稿日:2017年5月30日
相続税の「更正の請求(納め過ぎた税金を取り戻すこと)」では、多くの場合「不動産の評価」が主人公になります。
つまり、「実は、当初申告していたよりも不動産の評価が低かった」と言うことですね。
今も昔も業界には「更正屋」と呼ばれる税理士・不動産鑑定士が存在します。
「後だしジャンケンはズルイ」という意見もありますが、「後から計算したらもっと評価額が低かった」と更正されてしまう当初申告を担当した税理士も、どっちもどっちですね。
更正の請求を手掛ける税理士・不動産鑑定士による「不動産鑑定士による不動産鑑定評価額が相続税申告に有効」なる宣伝文句を見かけますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
答えは「NO」(但し条件付き)です。
相続及び贈与の評価は「相続税法22条」で「時価」と定められ、「財産評価基準通達」で「市街地は路線価で」と定められています。
これが<原則>です。
一方、「特段の事情」がある場合に限り、合理的な手法を用いたその他の方式が許されています。
これが<例外>です。
どこにも、「不動産鑑定評価額を相続税評価額とみなして申告しても良い」とは書かれていません。
先日、築50年を超え老朽化した中古マンション1室の評価を巡り「財産評価基本通達ベースの7,206万円である」と主張する国税に対し、納税者が「不動産鑑定評価額2,300万円だ」と主張した裁判で、納税者の請求棄却(国税勝訴)の判決が出ました。
お互い様々な言い分があり、それぞれの主張を丁寧に追っていくとなかなか奥深い裁判なのですが、結局の所ポイントは「特段の事情があったのかどうか」です。
築50年マンション裁判では「特段の事情はなかった」とされ、国税側が主張する「財産評価基本通達に則った評価方式」が採用されました。
この「特段の事情の有無」は、課税の観点から見て「ある」か「ないか」を判断します。
不動産取引の観点ではありません。
つまり、不動産実務だけを知っている人では判断が難しく、また、税金だけを知っている人にもハードルが高い非常に高度な判断です。
実は「財産評価基本通達」をフルに駆使すると驚くほど評価が低く出る場合があること、あまり知られていません。
案件によっては、不動産鑑定評価額よりも低い評価となる場合もあるのです。
不動産鑑定士にお金を支払い、更に国税と一戦交えるリスクを考えると、相評の方が合理的かつ安心かもしれません。
当方が関与した場合、財産評価基本通達の重箱の隅をつつき徹底的に税理士に評価を落としてもらいつつ、案件によっては不動産鑑定士に相談し、特段の事情があると思えば総合的な判断により不動産鑑定評価を提案します。
費用対効果や納税額だけじゃなく、精神的な負担も考慮の上、納税者にとってベストな方式を提案します。
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