投稿日:2024年8月6日
未婚やお一人様の増加により、相続に付随して介護や扶養に関する相談が増えてきました。
先日も「80歳を超えた一人暮らしの叔父がいるのですが、誰が、どこまで面倒を見る必要があるのでしょうか?」と、叔父の兄の子、つまり甥の方から相談がありました。
叔父の相続人は甥だけですから、相続については特に問題ありませんが、その前の段階を心配しています。
今回は、この相談例を基に扶養義務について解説したいと思います。
扶養義務には「生活保持義務」と「生活扶助義務」があります。
「生活保持義務」とは、扶養義務者(扶養義務を負っている人)が自分と同じ水準の生活を扶養権利者(扶養されるべき人=被扶養者)にも保障する義務のことで、分かりやすく言えば「夫には妻や未成年の子を養う義務がある」と言うことです。
「生活扶助義務」とは、扶養義務者が自分の余力の範囲内で被扶養者を扶養する義務のことで、例を挙げると、「兄が弟の生活の面倒を見る」「両親が30歳になった子の面倒を見る」等があります。
民法上、配偶者や直系血族、兄弟姉妹には当然に扶養義務があり、特別な事情がある場合は三親等以内の親族にも扶養義務が生じると定められています。但し、三親等以内の親族に扶養義務が生じるのは、当然に扶養義務がある直系血族、兄弟姉妹、配偶者に経済力・資力がない場合です。
さて、相談の「甥が叔父の扶養義務を負うかどうか」ですが、甥と叔父は三親等の関係であり、叔父は“お一人様”のため当然に扶養義務を負う直系血族、配偶者、兄弟姉妹がいませんから、特別な事情がある場合甥に扶養義務が生じることになります。
では、特別の事情とはどのような場合を指すのでしょうか。
ここの判断は難しいのですが、「特別な事情が認められるハードルはかなり高い」と思って下さい。
甥が叔父によって扶養されていたことがあるとか、叔父が甥に金銭を交付していた、叔父と甥は同居している等、甥が何らかの恩恵を受けている場合は特別な事情があるとして甥に扶養義務が生じますが、単に叔父がお金に困窮しているだけでは甥に扶養義務は生じません。
過去には「よほどの事情でない限り特別事情ありと認めるべきではない」とした裁判例もあります。
実際には「法的にどうか」ではなく「人としてどうか」の判断により親族間で対応しているケースが多いのですが、法的には以上の回答になります。
元気なうちに話し合っておくことべきですね。
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