ブログ「相続の現場から」

役員退職金が経費にならない?

投稿日:2017年9月20日

代表取締役が相談役に分掌変更となり、報酬が3分の1に激減したことを理由に支給された役員退職金の損金算入が認められるかどうかが争われた事件で、平成29年7月12日、東京高裁は納税者敗訴(つまり、役員退職員は損金にならない)の判決を下しました。

 

<事実>
・代表取締役→相談役
・月額報酬205万円→70万円

 

<申告の経緯>
・役員退職金を損金として申告
・税務署が税務調査で誤りを指摘し、納税者は修正申告に応じた
・更正の請求→税務署が拒否
・国税不服審判所に審査請求→棄却の裁決
・東京地裁へ提訴→納税者敗訴
・東京高裁へ控訴→控訴棄却
 *現在、税者が最高裁へ上告中

 

<ポイント>
①相談役になった後も、新社長をサポートしている
②幹部参加の経営会議に出席し、重要な情報に接している
③10万円を超える支出の決済に関与
④銀行から実権者として認識されている
⑤来客対応等対外的にも重要な地位にある

 

<結果>
分掌変更により肩書が代わっても経営上主要な地位を占めているため、報酬激減基準の除外者に該当する。
よって、支給された退職金は損金計上不可。

 

結局、「税の世界は実態がすべて」です。

 

「過去大丈夫だった」
「調査が入ってけど何も言われなかった」
のは単なる偶然に過ぎませんからご注意下さい。

 

※法人税基本通達9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)

法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。

(1)常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。

(2)取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。

(3)分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

<注>本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。

 

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