ブログ「相続の現場から」

遺言があっても揉め事はなくならない…

投稿日:2026年3月11日

令和8年2月22日(日)付の新聞に、『家族を裂いた母の2通目~「実子3人のみで話し合って」~遺産争いの種 除くはずが』の記事がありました。

 

密かにお気に入りの「揺れた天秤~法廷から~」シリーズ。

 

今回は正に僕の仕事ドンピシャど真ん中、死亡直前に作成された2通目の自筆証書遺言を巡る争族トラブル。

 

 

 

遺言者は91歳で他界した母。

 

母は、死亡する7年前(当時84歳)に、長らく同居し介護等の面倒を見てくれた次女の相続分を優遇する遺言書(自筆証書遺言)を作成していました。

 

「長い間親と同居し補助・介護につとめてくれた。これは容易なことではなく、今後一生の生活のためにも憂いのないよう取り計らっておきたい」という文言に母の次女に対する謝意を汲むことができます。

 

ところが、次女が家庭裁判所に検認を申し立てた1ヶ月後、長女と長男が母が死亡する1年前(当時90歳)に作成したという2通目の遺言書(自筆証書遺言)を出してきました。

 

そこには「遺産及び今後の資産管理は実子3人のみで話しあってください」とだけ書かれています。

 

どちらも筆跡は母。日付や氏名、押印等の要件を満たしています。

 

母が最初の遺言書を作成した当時独身だった次女は、その3年後、62歳で結婚しています。

 

長女と長男は2通目の遺言が作成された理由について「次女は婚姻により経済的な心配がなくなった」ことを挙げ、その有効性を主張しました。

 

 

東京地裁は、2通目の遺言書作成当時母に判断能力の衰えがみなられなかったことから「遺言を撤回する意図があればその旨を明記していたはずであり、介護を担った次女への感謝が結婚によってただちに減殺されるわけではない」と指摘し、1通目の遺言が有効と結論づけました。

 

その後東京高裁も一審の判断を維持し、次女の勝訴が確定しました。

 

長女と長男が憂いていたのは、次女の結婚相手に対する不信感。次女と婚姻した夫は婚姻後も次女と同居せず、次第に母親の資産管理に介入するようになり、母親が「資産を狙っている」と口にすることもあったそうです。

 

そうであれば他に方法があったはず…。

 

「遺言があっても揉め事はなくならない」

 

そのことを痛感する事案ですね。

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