投稿日:2018年10月5日
遺産分割で揉め、裁判に発展してしまった場合、ステージがまったく違ってしまうこと、知っていますか?
例えば、こんな事案があったとします。
(フィクションであり、実在の事案ではありません)
*長文なので、時間がある方のみ先に進んで下さい。
長男は父と同居し、妻と一緒に父の面倒を診ていました。
母は先に死亡しています。
父の財産は自宅兼賃貸マンション1棟のみ、複数の相続人が分割して相続できる類の財産ではありません。
お金はほとんどありません。
父は昔から「マンションは長男に継がせたい」と公言していました。
長男は父に遺言を作成して欲しかったのですが、父の認知症が相当進行し、完全看護の施設に入所することになってしまったため、作成を諦めました。
一方、父の面倒なんて見たこともない長女が、父の施設入所を聞きつけ、「そろそろかな」と父の入所している施設に顔を出すようになりました。
そして、長女が(悪徳)弁護士に相談し、父のもとに(レベルの低い)公証人を連れてきて、ほとんど判断応力のない父に、自分が有利となるような遺言を作成させました。
もちろん、遺言を作成させた事実を長男は知りません。
ただ、施設の職員から「長女がスーツ姿の男性数名と部屋に30分程こもっていた」と聞き、嫌な予感はしていました。
父が死亡しました。
死亡する3カ月前に、公正証書遺言を作成していました。
遺言執行者に指定されているのは(悪徳)弁護士、もちろん証人2人も(悪徳)弁護士と愉快な仲間達です。
長男によれば、当時の父はほぼ寝たきり、会話もままならず、難しい話は一切理解できず、とても遺言を作成できる状態じゃなかったそうです。
施設の職員も同様の意見です。
遺言作成直前の医師の診断書にも「認知機能は高度低下している」と記載されています。
しかし、弁護士は「遺言能力の有無を判断するのは法律家であり、医学的見地から認知症かどうかを判断する医師の診断とは考え方が異なる」と胸を張って言い切ります。
当時、会話も意思確認も、しっかりできたそうです。
壊れたレコードのような話ししかできなかった父と、会話が成立したそうです。
さすが、日本一難しい試験をクリアした頭脳明晰な弁護士の理解力は違いますね。
公証人も「きちんと意思を確認した上で手続きした」と言っています。
寝たきり、意識朦朧の父と、初対面かつ30分面談しただけで、きちんと意思が確認出来た…さすがです。
出来上がった遺言書は、予備文言や代償交付金の分割支給等、物凄く複雑な内容になっています。
認知症の高齢者が、その内容を正確に理解できた、しかも30分で。
更に、父自らの意思で「その複雑怪奇な文言を盛り込んで欲しい」と言ったなんて、さすが、実務経験30年以上を有する法律の専門家は違いますね。
って、アホか!
しかし、残念ながら裁判しても、長男に勝ち目はほとんどないでしょうね。
「人として」を基準に裁けるのは大岡越前だけです。
裁判になった場合、証拠が全てです。
状況証拠を積み上げていく方法もありますが、「弁護士+公証人」の牙城を崩すのは難しいでしょう。
国家賠償になりますからね。
真面目な長男が“やっかい”や面倒だけ押し付けられ、遺留分相当の財産しか相続できない…。
不条理ですし、悔しいですが、(このラウンドは)長男の負けですね。
(言葉は悪いですが)「死人に口なし」です。
当時の状況は誰にもわかりません。
録画や録音がない限り、立証は難しいでしょう。
(あったとしても、長男と愉快な仲間達は否定するでしょうけど)
不愉快極まりない事案です。
しかし、これが現実です。
あなたはこの事案から何を学びましたか?
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