投稿日:2019年10月7日
40年振りに改正された民法(相続法)改正の目玉と言ったら、何と言っても『配偶者居住権』じゃないでしょうか。
自宅を「利用(居住)する権利」と「所有する権利」に分けて相続するなんて発想、今までありませんでしたから。
「残された高齢な配偶者(イメージしているのは妻)が安心して老後を過ごせるような措置」と言えば聞こえはいいですが、実際の所お客様に勧めるかと言うと…う~ん、微妙だなあ…。
その理由はいくつかあるのですが、まず、配偶者居住権の譲渡不可が挙げられます。
妻が「夫から相続した配偶者居住権を処分して老人ホームに入りたい」と希望しても、原則として換価処分できません。
(裏技的な方法がない訳ではありませんが、確実な方法とは言えないので、ここではちょっと…。)
評価の問題もあります。
相続する配偶者の年齢が高い場合、配偶者居住権の評価額が低くなり、その分他の財産(金融資産等)をたくさん相続することができます。
(批判承知で敢えて言いますが)高齢のお母さんに多額のお金が必要ですか?
逆に、相続する配偶者の年齢が若い場合、配偶者居住権の評価額が高くなり、その分他の財産(金融資産等)を少ししか相続できません。
長い人生、お金も必要じゃないですか?
子が小さい場合、良く分かっていない弁護士等が未成年後見人に就き「妻は配偶者居住権を相続し、子が自宅所有権とお金を相続する」なんてこと、起こりそうですよね。
子が多感な時期に親子のコミュニケーションが上手く取れず、子が成年に達しお金を持ってどこかへ行ってしまう…なんてドラマの見過ぎ???
課税の問題も明らかになりました。
配偶者居住権を相続した妻が夫が死亡してから1年後に死亡しても、配偶者居住権が消滅するだけなので、所有権を相続した子に何ら課税はありません。
(お金のことだけを考えたら)「安い税金で実家を相続することができラッキー!」となります。
配偶者居住権を相続した妻が配偶者居住権を放棄した場合、所有権を持つ子に贈与税が課税されます。
配偶者がまだ若いうちに放棄した場合、評価額が高額となり、子にとってかなりの負担となるでしょう。
配偶者居住権を相続したのが後妻で、所有権を相続したのが先妻の子の場合、不仲なため、後妻が何も言わずいつの間にか配偶者居住権を放棄していた…なんてこと、ありそうじゃないですか?
そもそも、贈与税が課税されると知らず、悪気なく勝手に放棄する人もいるでしょうし。
他にもたくさん“落とし穴”がありますので、適用する前に、分かっている人にしっかり相談し、メリ・デメを理解してから検討して下さいね。
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