投稿日:2021年5月7日
2,500万円までなら贈与税がかからない相続時精算課税制度、制度が創設されたのが平成15年ですから、かれこれ18年になります。
この制度、相続手続きを考えると本当にやっかいです。
相続時精算課税制度を利用した場合の問題点はいくつかありますが、その中でも
①その後暦年課税制度の贈与(年間110万円までなら贈与税がかからない)の適用は受けられない
②贈与者に相続が発生した場合、贈与時の評価額で相続財産に持ち戻される
③制度について理解していない人が多い
には気をつけなければいけません。
①その後暦年課税制度の贈与(年間110万円までなら贈与税がかからない)の適用は受けられない
このことを知らない人が多い!
2,500万円もらった翌年から110万円もらっている人の多いことに驚きます。
一度相続時精算課税制度の適用を受けたら、二度と暦年課税制度には戻れません。「やっぱりやめた!」はありません。
相続時精算課税制度の適用を受けた後に(同じ人から)1円でももらった場合、必ず税務署へ申告し、2,500万円を超えた部分について20%の贈与税を納めなければいけません。
もし払わなかったら脱税です。バレたら無申告加算税(追徴税)や延滞税がかかります。
②贈与者に相続が発生した場合、贈与時の評価額で相続財産に持ち戻される
親が死亡した時、昔もらった2,500万円を使ってしまっていても、当時2,500万円で購入したマンションの価値が半分に下落していても、一切関係ありません。もらった当時の評価額2,500万円が相続財産に加算され相続税が計算されます。
そう、(原則として)相続時精算課税制度は相続税対策にはならないのです。「原則として」とついているのは、例外があるからです。もし親からもらった2,500万円で株式を購入しその価値が1億円に上がっていても、親が死亡したら2,500万円しか持ち戻さなくていいのです。
つまり、贈与した時よりも相続が発生した時の方が評価額が高い場合、「制度を活用して良かった」となります。
③制度について理解していない人が多い
親が勝手に制度を利用して子へ贈与しているケースが散見されます。その場合、子はまったく理解していません。親から「2,500万円あげるけど、税金はかからないから心配しなくて大丈夫」と言われ、頭の中から意識がなくなっています。
親が相続税対策になると勘違いし取り組んでいるパターンが多いですね。
税理士も間違って覚えている人がいるようで、先日相談にのった人は、顧問税理士から「2,500万円あげた後でも年間110万円以内ならば贈与税がかからないので申告しなくて大丈夫です」なんて指導されていました。
与党の税調が「令和3年度税制改正大綱」を話し合う際、「相続税と贈与税の一体化を推進するため、暦年課税制度の贈与を廃止し相続時精算課税制度に一本化したらどうか」の意見が出ました。
もしそうなったら、親に相続が発生するまでずっと贈与について補足しておかないといけませんので、備忘録が必要になりますね。
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