投稿日:2023年5月7日
遺言で財産を寄付や遺贈する方が増えています。
自分の財産を誰にあげるかは本来自由ですから、それはいいのですが、もらう方(受遺者と言います)が法人の場合、落し穴がたくさんあること、ご存知ですか?
まず、財産をもらった法人は(個人ではないので)相続税を負担しなくていいかわりに「法人税」がかかります。取得した財産が受贈益として認識されますので注意が必要です。
しかも、財産の価額は「財産評価基本通達」ではなく「時価」になります。例えば、取得した財産が不動産だった場合、通常の相続であれば路線価や固定資産税評価額等で評価されるところ、受遺者が法人の場合は「時価」で評価されますので、時価と相続税評価額が大きく乖離しているような都心部の不動産をもらった場合、受贈益が大きくなります。
法人に財産を遺贈した場合、当該遺贈財産の譲渡について、準確定申告(被相続人の所得税の申告納税)する必要が生じます。法人による財産の取得原因は相続ではなく譲渡だからです。
被相続人に相続人がいる場合、相続人が準確定申告の義務を負います。相続人が財産を取得しているか否かに関わらず義務を負いますので、何ももらっていないのに申告納税義務だけ負うと言う可哀そうな事態となってしまう可能性があります。
被相続人に相続人がいない場合、少しやっかいです。
相続人がいない遺言者が法人へ財産を「包括遺贈(割合や持分で財産を遺贈)」した場合、その法人は相続人と同一の権利義務を有しますので、遺言者の譲渡税について準確定申告の義務を負うことになります。
相続人がいない遺言者が法人へ財産を「特定遺贈(特定の財産を指定した上で遺贈)」した場合、残余財産について相続財産管理法人が成立され、利害関係者の申し立てにより選任された相続財産管理人が準確定申告に関する手続きを行います。
ややこしいでしょ?
法人にあげられるのか否かと問われたら「あげられます」と回答しますが、その後の手続きや税負担等の問題がありますから、実際に取り組む場合は詳しい人に相談してからにしましょう。
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