投稿日:2023年5月8日
令和5年5月6日(土)、新聞に『「デジタル遺言」制度創設へ~ネットで作成、押印・署名不要~改ざん防止、相続円滑に』の記事がありました。
朝刊広げて倒れるかと思いました…。
時代の流れとは言え、ここに切り込むのか…。
確かに、争族を防ぐ、遺産分割の長期化を抑制する、所有者不明土地問題を解消すると言った観点で考えたら遺言作成は有効な解決策の一つだと思います。
ですから、高齢者が遺言書を作成しやすくなるよう環境を整えることは重要です。
しかし、相続の現場で生きてきた僕としては、書かされた遺言、自分の遺志とは裏腹な遺言、中途半端な遺言、逆にトラブルを生んでしまった遺言の現場をたくさん見てきましたし、公正証書遺言ですらトラブルがあり、実際に裁判所に無効と判断された遺言書も数多く存在するのですから、「自筆証書遺言をPCやスマホで作成できる、しかも押印・署名不要」となったら、とんでもないことになるのでは…と恐ろしくなります。
本人が作成したことを公的な機関等で確認すればいいと考える人もいるかもしれまんが、ほんの数分やりとりしただけでは本当に本人の遺志かどうかは分かりませんし、形式だけになってしまうと思います。
遺言って法的に厳格で、難しいから良いと思うんです。誰でも簡単に作成できてしまったら、それこそ逆のトラブルが増えるだけとなるのではないでしょうか。
「PCやスマホで作成でき、しかも押印・署名不要」となったら、息子が勝手に親の遺言書を作成し、判断能力が衰えた親をうまく言いくるめ、さも自分で作成したかのように装う事件が多発するような気がします。
記事に「遺言制度に詳しくない人でも自分でつくりやすくする」とありますが、遺言制度に詳しくない人は勝手に作成しちゃ駄目なんですよ!
大事なことなんですから、本を読んで勉強するとか、専門家に相談するとか、公正証書で作成するとかしないと。詳しくないから簡単に作成できるようにしようって趣旨を履き違えてると思いますし、かえってトラブルを増やすだけではないでしょうか。
この辺り、現場で経験を積んだ実務家だったら理解して頂けると思います。
実際の現場を知っていれば、相続が発生した後の状況を想定し、逆算してどうすべきかを考えるので、「PCやスマホで作成でき、しかも押印・署名不要」なんて恐ろしくて口に出せません。
年内に法務省が有識者で構成する研究会を立ち上げ、2024年3月を目標に新制度の方向性を提言し、その後民法改正を目指すので、実現するとしても数年先の話ではありますが、本でしか勉強したことがない人達だけで話し合うのでしたら良くない結論に至るような気がします。(僕を研究会のメンバーに入れてくれないかなあ…。東大出てないし、司法試験合格していないし、著名じゃないから駄目だよなあ…。)
考えが古い、今の時代にそぐわないと言われればその通りですし、甘んじて受けますが、一生に一度しかない人生の最後をいい加減な遺言で締めるような人生を送って欲しくありませんので、僕は断固として反対です。
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