投稿日:2024年6月10日
令和6年5月19日(日)付の新聞に、『遺族年金 争った2人の「妻」~「夫婦関係は形骸化している」~法律婚か44年の内縁か』の記事がありました。
遺族年金は妻に支給されるって思っていませんか?
普通はそう思いますよね?
この記事を読んだ時、昔相談に乗った「離婚を拒否する妻」案件を思い出しました。
相続は戸籍が命。離れて暮らそうが、不仲だろうが、戸籍にさえ入っていれば妻に相続権がありますし、税の優遇も受けられます。
逆に、どれほど仲良しで、長く暮らし、その男性に生計を頼っていたとしても、内縁の妻に相続権はありません。特別縁故者として相続財産の取得を主張しても、相続人がいる場合は認められません。
これに対し、社会保険は「誰の生計を維持していたか」が重要視されます。
原則として、遺族年金は戸籍上の妻に支給されることが優先されますが、事実上の離婚状態にあり、かつ内縁の女性の生計を維持していた場合は(正妻がいたとしても)内縁の女性に支給されるケースがあるのです。
ここが、相続と社会保険の違いです。
記事では、離婚に応じない正妻との離婚交渉を諦め、44年間生活を共にし子も生まれた男性が死亡し、正妻と内縁の女性が「どちらに遺族年金の受給資格があるのか」を巡り争った事案を取り上げています。
国は、正妻の「別居状態だったが、定期的に連絡を取り合い、年60万円の養育費を受け取り、子の成長を一緒に見守っていた」との主張を受け入れ、正妻への支給を決定しましたが、これに納得しない内縁の女性が国を相手に提訴したところ、東京地裁は「結婚は形骸化している」と国の決定を取り消し、内縁の女性への支給を認めました。
正妻としては、出産で里帰りしていた時に浮気相手と出て行った夫を許せなかったのでしょう。その後、経済的に苦労し一人で子を育てたようです。なのに遺族年金がもらえない…。
内縁の女性は男性と共同名義でマンションを購入し、子をもうけ、44年間一緒に暮らし、周囲も家族であることを疑わず、葬儀で喪主を務め、なのに国から遺族年金は正妻に支給すると言われてしまった…。
きとんとけじめをつけなかった男性が悪いのか、離婚に応じなかった正妻が悪いのか、事実婚であることの不利益を認識せず過ごしてきた内縁の女性が甘いのか…。
この記事を読み、以前、浮気して出て行った夫との離婚を頑なに拒否している妻の相談に乗ったことを思い出しました。
離婚に応じない理由は、遺族年金がもらいたいから。
夫は会社を経営しそれなりに財産を有していましたが、どうせ使ってしまうし、隠されたら何もできないと、相続による財産の取得は諦めていました。しかし、非課税で終身もらえる遺族年金は女性にとって魅力的であり、絶対に離婚しないと言うのです。
相談者である妻は働いており、十分な収入があります。夫が出て行ってから数十年、自分の稼ぎだけで生活が成り立っています。
その状況を鑑み、遺族年金が浮気相手である内縁の女性に支給される可能性があることを助言したところ、「今までの頑張りは何だったの!経済的に苦労していないのは子のために一生懸命働いたからなのに、それが逆に遺族年金がもらえない理由になるかもしれないって…。夫が死亡すれば遺族年金がもらえると思って耐えてきたのに…私の人生は何だったの!」と泣き崩れてしまいました。
難しいですね。
2022.5.16
2015.12.14
2024.7.4
2017.4.23
2024.12.4
2024.12.9
2024.10.7
2024.12.27
2024.12.30
2022.11.21
© 2014-2024 YOSHIZAWA INHERITANCE OFFICE