投稿日:2024年10月28日
令和6年10月24日(木)付の新聞に『増える「老老相続」資産滞留~相続人、半数が60歳以上~若年層は負債増、偏り強まる』の記事がありました。
その通り!この記事、分かるわ~。心の底から本当にそう思います。
今から約60年前、昭和38年頃の男性の平均寿命は約67歳でした。
当時は今より婚姻が早かったため、父が67歳で死亡すると、相続人である子の年齢は40歳前後です。40歳というと、子の学資や住宅ローンの返済等、一番生活にお金がかかる年代です。家族旅行にだって行くでしょうし、食べ盛りの子を抱え食費も大変です。部活や塾にもお金がかかります。お父さんだってゴルフや飲み会等、お金がいくらあっても足りません。
そんな時に遺産を相続すると、使い道はいくらでもあるため、遺産が「生きたお金」となります。
令和5年の男性の平均寿命は約81歳(女性は約87歳)です。
81歳の父が死亡すると、相続人である子の年齢は55歳前後です。父の財産を全部母が相続した場合、母の平均寿命は87歳ですから、その時の子の年齢は60歳に達します。
60歳の時に相続により遺産を取得しても、既に育児は終了し、住宅ローンも完済しているか、或いは残債があってもごくわずか、老後のために退職金を貯め、第二の職場で働き、かわいい孫でもできれば援助してあげたいと思っていても息子も娘も結婚する気なし…と、お金の使い道がなく貯める人が多くいます。
つまり、遺産が「死に金」になってしまうのです。
あくまでこれは平均ですから、実際はもっと高齢で相続が発生している方もたくさんいます。(以前「100歳の母が死亡し、相続人である長男が78歳で認知症を発症している」という案件の相談を受けたことがあります。)
お金が消費に回らないと経済に悪影響を与えますし、景気も悪化していきます。
相続時精算課税制度もこのような「老老相続」を回避する一つの方法として平成15年に創設されたのですが、使い勝手や節税効果の乏しさも相まって国が想定したよりも浸透しませんでした。
令和6年から相続時精算課税制度に年間110万円までの基礎控除額が創設させましたが、「老老相続」を抜本的に解決するほどの迫力はありません。
長生きを推し進めてきた国の政策に思わぬ落とし穴が生じた訳です。
年金や医療、介護といった社会保障も長生きのために財政が悪化している訳ですから、今後も長生きを推奨していくのであれば、それを前提とした守りの部分も一緒に構築していかないと…。
長生きは良いことですから、それを後押ししてきた国にはしっかり軌道修正して欲しいと思います。
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