投稿日:2025年12月17日
令和7年11月18日(火)付の新聞に、『証券事務集約へ新会社~日証協 ネット講座開設など~顧客手続きを短縮』の記事がありました。
証券会社・利用者双方のメリットにつながる良いことなのは間違いないのですが、反面、ビジネスチャンスを失うことになるから勿体ないなあ…と(元銀行員としては)営業面で残念に感じました。
記事によると、日証協や証券各社が中心となり事務を一括で担う新会社を設立し、まず
①アプリやネットを使った証券口座の開設
②相続手続き
③外国株の手続き
の3分野における事務を集約するそうです。
口座開設の手間暇、複雑な相続手続き、専門的な知識を要する業務にかかるコストが増大する一方、人材確保が難しくなっていることが背景にあるそうです。

気持ちは分かります。
事務を効率化することで、証券会社は事務コストの削減や人員配置の適正化につながりますから、コストを強く意識する経営者や事務が苦手な担当者等は大歓迎でしょう。
また、利用者にとっても、複数ある証券会社で同じ手続きを何度も繰り返すのは時間の無駄ですから、利便性としてのメリットは大きいと思います。
しかし、事務の集約、特に郵送やネット等空中戦で手続きが進むため、証券会社と利用者の接点が希薄化し、証券会社における貴重な営業の機会が失われてしまうのではないでしょうか。
新規取引先を1件獲得しても、相続で1件失えば取引数はプラスマイナス0(ゼロ)です。純増になりません。
新たに預かりを1億円獲得しても、相続で1億円流出したら純増になりません。
新規取引先が取れなくても、預かりが増えなくても、相続で解約・流出してしまう先を引き留めることができれば結果は同じプラスマイナス0(ゼロ)です。
そう考えると、相続は新規の営業と同じくらい重要なはずです。
令和5年における死亡者数は約159万人でした。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、今後数十年に渡り年間約160万人台の死亡者数で推移していくと試算されています。
今後、新規の見込み先である人口は減少の一途をたどり、お金を持っているのは高齢者ばかりのためコンプライアンス的に懸念があります。
しかし、死亡者数は今後何十年と安定的にマーケットが存在するのです。
だったら相続を事務コストの削減と効率化のために切り離すのではなく、新たな営業の機会(ビジネスチャンス)として精鋭部隊をつぎ込めばいいのに…なんて考えてしまいます。
相続は貴重な営業の機会であり、重要な顧客との接点の場なのです。
実は前職の銀行員時代に似たようなことを考え「相続手続きを担うセンターに異動させて欲しい」とお願いしたことがあったのですが、新期先を取って来る営業が脚光を浴びる文化だったことからピンとこなかったようで実現しませんでした。
今回の記事を読み、何年経っても上の方の頭の中は同じなんだなあと思い出しました。

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