投稿日:2021年8月4日
相続手続きを進める上で何が大変かと言ったら、一番詳しい本人が死亡してしまっていること。
誰に何をあげたいのか、どう分けて欲しいのか、どこに何があるのか、なんでこんなにお金が減っているのか…、本人に直接聞けばあっという間に分かる話でも、その本人は既にいません。なので、残された相続人は残された資料を基に“謎解き”していかないければいけないのです。
急がなければならないのは相続税の申告納税。何と言っても10ヶ月しかありませんから。悲しみ暮れている暇はありません。相続税がかからないのであれば期限はありませんので、多少余裕を持って事にあたれます。
「相続税がかかるかどうか」を判断するために最初にやらなければいけないのは「相続財産がいくらなのか」の把握。
故人が遺言やエンディングノート、財産メモ等を残してくれれば楽なのですが、何もなく、しかも離れて暮らしてたら大変です。「どこにあるか」から始めないといけませんから。この辺りから本格的な“謎解き”が始まります。
謎を解く鍵は、鍵のありかにつながるヒントが見つかるかどうかにかかっています。それを僕は“宝探し”と呼んでいます。
引き出しの通帳や証書、無造作に置いてある名刺、冷蔵庫に貼ってあるカレンダー、テーブルのティッシュ、財布に入っている明細書の控え、ノベルティの貯金箱、資源ごみとして束ねられている書類に閉じられている報告書…ほぼ“家宅捜索”ですね。
ようやく取引している金融機関が分かり、残高証明書を入手すればそれで一件落着だと思います?
違います。
例えば、お亡くなりになる直前に引き出しているかもしれませんし、3年以内に贈与しているかもしれませんし、名義預金があるかもしれませんし、まだ支払っていない税金等があるかもしれません。
なので、今度はお金の流れを確認し、相続発生日における相続財産を確定させなければいけません。
お金の流れを紐解く鍵は、銀行の通帳にあります。何年も前の古い通帳が残されていれば、そのどこかにヒントがある可能性があります。通帳に印字されている数字と睨めっこし、複数の銀行間の資金移動や親族間の資金異動に目を配り、相続人の記憶を重ね、得られた情報をパズルのように組み合わせ、そこから見える何かに気付くかどうか…ほぼ“推理小説”ですね。
通帳が残されていない場合、今度は“探偵ごっこ”です。
どこかに何かないか?手帳は?振込依頼書の控えは?契約書は?手書きのメモは?生前の発言は?どこの誰と会っていた?親族の記憶は?…何かしらの手掛かりを見つけ、そこから少しずつ調査範囲を広げていくんです。
なんでそこまでするのかって?
だって、税務署は質問検査権を持ってますから。国税は相続人の同意を得ることなく、合法的に銀行へ直接調査に入り、過去の取引履歴を確認し、担当者からヒアリングし、外堀を埋めた上で調査に来るんです。(そもそも、税務署は相続が発生する前からめぼしい先の情報を収集してますけどね。)そんな税務署に対抗し、余計な税を負担しないようお客様を守るためには、出来る限りのことをやるしかありません。
長くなりましたので今日はこの辺りで。いつかそのうち、もう少し具体的な事例を紹介できればと思っています。
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