ブログ「相続の現場から」

「もう一つの総則6項」事案の陰には銀行の影が見える?

投稿日:2021年5月6日

何も対策を講じなければ相続税総額が3億円を超える資産家の高齢男性が、死亡直前多額(15億円)の借り入れを行いマンション1棟を取得し、相続後に「時価と相続税評価額の著しい乖離」及び「債務控除」の効果により相続税を大幅に軽減(相続税総額約14百万円)させたことが財産評価基本通達総則6項に該当するとして課税当局から更正処分を受けた事案について、令和2年11月12日付、東京地裁納税者の請求を棄却(国税勝利)する判決を下しました。(以下、本事案を「横浜事案」といいます。)

 

「横浜事案」については、少し前の「札幌事案」と対比して考えると面白いと考えていました。

つまり、どちらの事案も、

①多額の借入

②時価と評価額に大きな乖離あり

③納税者は通達、国税は鑑定評価をそれぞれ主張

④億単位の相続税削減効果

⑤銀行の稟議者に「相続対策を目的とした借入」の記載がある

等は同じですが、

「札幌事案」はマンションを取得した時期が相続開始の3年前なのに対し、「横浜事案」3ヶ月前である

「札幌事案」は2棟取得したマンションのうち1棟を相続後すぐに売却しているのに対し、「横浜事案」は相続後も売却せず、従前から不動産の賃貸管理を業として営んでいる

こと等が異なっており、その辺りの違いをどう読むかがポイントと見ていたからです。

 

ところが、「横浜事案」を研究している過程で、相続税対策の相談に応じ、多額の融資を実行し、不動産売買に関与し(4ヶ月間4回売買を繰り返し)ていた銀行立場が気になって仕方がありません。

 

☑4ヶ月前に7億5000万円で取引された物件が、4か月後に15億円と倍で取引された経緯(売買を繰り返した売主・買主と銀行との関係)

☑4回の売買に介在した仲介業者と銀行との関係

☑肺がん発覚直後に銀行が「早急に相続税対策すべきであり、即効性があるのは中古物件の購入である」と提案し業者を紹介しているストーリー性

☑所有権移転登記を中間省略させた理由と目的

 

裁判ではその辺りのことについて一切触れられていませんが、4ヶ月前7億5000万円で取引された物件を15億円で購入し、物件を紹介してくれた銀行から融資全額実行され、なのに課税当局から節税を否認されたのですから、納税者銀行スタンスモラルもっと怒るべきでは?なんて思います。(もしかしたら別の土俵で戦っているのかもしれませんが。)

 

実際の所どうなのか分かりませんし、仮に戦ったところで銀行が本件で儲けた額本音を話す訳ありませんので詳細は闇の中ですが、客観的に開示されている情報からだと、儲けたのは銀行売主である不動産会社(及び仲介業者)のように見えます。

 

この事案、そろそろどこかの勉強会で取り上げないとね。

 

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