投稿日:2025年9月29日
令和7年9月10日(水)付の新聞に、『家賃引き上げ相談急増~「家主が強引要求」相場高騰背景~算定根拠の確認重要に』の記事がありました。
都心部における賃料高騰を背景に、大家さんが強引に家賃を引き上げるケースが増えているそうです。
確かに、固定資産税等の税負担が増し、物価や人件費の高騰により修繕や維持管理にかかる費用も上がり、大家さんの負担が増していますから、それらのコスト増を家賃に転嫁しようと考えるのは当たり前です。
しかも、都心部では賃貸物件の需給が逼迫しているため、新たな入居者は高い家賃を払わないと借りられない状態になっています。その姿を見たら、何故自分の貸家は家賃が安いままなんだろう…値上げしたくなるのは当然だと思います。
しかし、新規家賃(新規賃料)と継続家賃(継続賃料)は考え方が異なります。
新規家賃は大家さんが好きなように設定することができます。(設定した家賃が高いと入居者が見つかりませんから、入居者を確保するためには、周辺の相場を睨み、適正な水準の家賃に設定する必要がありますが。)
一方継続家賃は、一度契約で決めた家賃が更新される際の適正家賃ですから、ベースが旧家賃となります。更新する際周辺の家賃相場が高騰していたとしても、その額がベースとなるのではなく、今までの家賃をベースとして取り決めが行われるのです。
継続家賃を引き上げるためには、①土地や建物にかかる税負担の増加、②土地や建物の価格上昇やその他の経済事情の変動、③近隣の類似物件と比べて不相当である等の条件が必要になります。
例えば、固定資産税や消費者物価指数が2%上昇している場合、そのことを根拠に、契約更新の際「今までは10万円でしたが、来月の家賃から10万2千円に上げさせて下さい」と要求する、ということです。
周辺の似たような貸家が13万円だからうちも13万円で…の気持ちは分かりますが、それは駄目なんです。
逆に、周辺の似たような貸家の家賃が8万円に下落しているからと入居者から家賃の引き下げ要求があったとしても、大家さんはそれに応じる必要はありません。
ただ、応じないと退去されてしまう可能性があり、退去されると次の入居者は新規家賃である8万円になってしまいますから、「間を取って9万円でどうですか?」的な交渉を進めることになります。
実は「優しい大家は恩を仇で返される」ことご存知ですか?
景気が良くなり固定資産税や物価が上昇しているにも関わらず、優しい大家さんが入居者のことを考え家賃(月額3万円)を何十年も据え置いているとします。
貸家が築50年を超え、さすがに老朽化が激しくなり修繕では費用が嵩むだけだからと入居者に「取り壊すから退去して欲しい」と立ち退きを申し出ました。
入居者は「同じ家賃の物件があれば退去してもいいですよ」と言ってくれたのですが、大家さんが探したところ、安くても月額7万円以上の物件しか見つかりません。
入居者に立ち退きを求める場合、大家さんには正当な事由が求められます。
単に物件が古くなっただけは正当な事由と認められません。
「たら・れば」の話ですが、もし大家さんが更新の都度適正な家賃に値上げしていたら、このような事態にはならなかったと思います。物価上昇等に合わせ、更新の都度数千円ずつでも値上げしていれば、今の家賃は3万円ではなく7万円に近い額になっていたはずです。
毎月3万円しか払っていない人に、いきなり月7万円も払わせるのは精神的にも経済的にも難しい…。
しかし、毎月6万円払っている人であれば、立ち退き費としてそれなりのお金を払う等誠意を見せれば立ち退き交渉のハードルが下がります。
不動産賃貸事業は入居者があって初めて成り立ちます。
放っておいてチャリンチャリンではありませんのでご注意下さい。
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