ブログ「相続の現場から」

平成28年度税制改正『空き家に係る譲渡所得の特別控除』

投稿日:2016年2月4日

消費税の軽減税率を巡りすったもんだがありましたが、昨年末にようやく『平成28年度税制改正大綱』が発表されました。

今回の改正のメインは消費税ですので、資産税関連は正直小粒です。

相続税も贈与税も、これっと言った目玉となる改正はありません。

しかし、実務的には注意が必要な改正がありますし、過去の改正で今年から適用開始となるものもありますので、きちんとポイントを押さえておく必要があります。

 

そこで、今回は新しい制度『空き家に係る譲渡所得の特別控除』を紹介したいと思います。

 

『空き家に係る譲渡所得の特別控除』を簡単に説明すると、

「古い家に一人暮らししていた親が死亡し、空き家となった実家を売却した場合、一定の要件の下所得から3,000万円控除できる制度」

となります。

 

儲け(譲渡所得)から3,000万円も控除してくれるのですから、適用を受けられる普通の家ならほとんど税金の心配がなくなるでしょう。

昔、「譲渡税を払いたくない」と言って、無理して実家に一度転居し、居住用の3,000万円控除が適用となってから売却した人がいましたが、そんな必要もなくなります。

しかし、一定の耐震工事を行うか、又は家屋を取り壊してから売却する必要がありますので、それなりにお金はかかりますし、リフォームしたからと言って、かけたお金の分高く売れる訳ではないので、費用対効果をしっかり検証してからじゃないとかえって損してしまう可能性もあります。

そもそも、税金は儲けに対してかかるものですから、実家を売却しても損になる(例えば、親が取得した金額の方が売却金額よりも高い等)場合、税金はかかりませんから特段何も考える必要はないでしょう。

 

一番問題だと思うのは、この制度を活用するためには「親にずっと一人暮らしさせないといけない」ことだと思います。

相続が発生するまで親は一人暮らししていないと適用にならないんです。

高齢の親が一人暮らししていたら、「心配だから」と子が同居してあげるケースもあるでしょう。

しかし、その優しさは<後日実家を売却した時納税負担が重くなる>という訳の分からない状況を生み出してしまいます。

同居して面倒見たら税金が安くなる制度の方が余程人としては正しい気もしますが…。

 

ちなみに、適用を受けられる期間は平成28年4月から平成31年12月までです。

また、実家は昭和56年5月31日以前に建築された古い家屋である必要があり、マンションは対象外です。

更に、1億円を超える高額物件も対象外となっています。

 

一人暮らしだった親が老人ホームに入所し、相続発生後空き家となったままの実家を売却しても適用となるのか?

一人暮らしだったことをどうやって証明するのか?

兄弟2人で実家を相続した場合、1億円超のハードルは各人か?不動産全体か?

兄弟2人で実家を相続した場合、兄弟それぞれに3,000万円控除が使えるのか?

等、まだ<大綱>ベースですから不明な点が多々ありますが、新しい制度ですので、注意して見ておきましょう。

空き家

 

 

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