投稿日:2018年9月3日
オーナー社長が自身が経営する会社にお金を貸す…中小の同族会社ではよくある話です。
「良い意味」でも「悪い意味」でも同族会社は“ドンブリ勘定”ですので、個人と法人の財布を一緒にしてしまう方がたくさんいます。
この、会社に貸したお金(貸付金)が相続財産になること、ご存知ですか?
会社に貸付金を有していた父(先代)が死亡したとします。
将来、会社が借りたお金をきちんと返してくれるなら、相続人は相続税を負担してでも、その貸付金を相続する価値があるでしょう。
ところが、会社が返済できるかどうか不明な時、もしくは返済できない時、どうしますか?
貸付金債権は、原則として元本と利息の合計額が相続財産となります。(財産評価基本通達204)
例外的に、債権金額の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難である時は、貸付金債権を相続財産として評価しません。(財産評価基本通達205)
例外的に貸付金が相続財産として評価されないケースは、
●手形交換所の取引停止処分を受けている
●会社更生法による更生手続開始の決定があった
●民事再生法による再生手続開始の決定があった
●会社法による特別清算開始の命令があった
●破産法による破産手続開始の決定があった
●業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業している
●私的整理手続きに係る債権者集会の協議等により債権が減免されている
等、会社が“ほぼ死に体”である必要があります。
先日、
◆相続前5期連続で債務超過である
◆営業損失が継続して発生し収支に改善の見込みがない
◆貸付金を返済原資を得ることは困難である
ことを理由に貸付金債権を相続財産上ゼロ評価し申告した事案で、東京地裁は「債務者(会社)が経済的に破綻していることが明白でなく、相続発生時点で会社は営業業を継続していた」と貸付金債権の全額を相続財産として計上する判決を下しました。(平成30年3月27日付)
オーナーに限らず、役員が会社に貸し付けている状態は中小企業ではよくある話です。
「絵に描いた餅」に相続税を払うことがないよう、注意しましょう。
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