投稿日:2018年12月13日
遺言執行者って、誰のために働く人なのでしょうか?
相続人?
遺言者?
現行民法1015条では「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と定められています。
ここだけを読むと、「遺言執行者は相続人の代理人なんだから、相続人のために働く人」と思ってしまいます。
一方、最高裁は昭和30年5月10日の判決で「遺言執行者の任務は、遺言者の真実の意思を実現するにあるから、民法1015条が、遺言執行者は相続人の代理人とみなす旨規定しているからといって、必ずしも相続人の利益のためにのみ行為すべき責務を負うものとは解されない。」と判示しました。
つまり、「遺言執行者は、遺言者の意思を実現することを職務とする者なのだから、遺言者のために働くべき」と示されたことになります。
???
遺言執行者は、一体どちらを向いて働けばいいのでしょうか?
遺留分減殺請求された場合、「遺言者の意思」と「相続人の利益が対立」することがあります。
例えば、「全財産長男に相続して欲しい」と父が希望しているのに、二男が長男を相手に遺留分減殺請求権してくる場合です。
遺言執行者は、民法上二男の代理人として遺産を取り戻さなければいけませんが、一方、最高裁では父の希望を尊重しろと言われています。
???
どうすりゃいいの?
そこで、今回の民法(相続法)改正で、遺言執行者の権限を明確にすべく、民法1012条に「遺言執行者は、遺言内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と下線部分が追加されました。
元々「遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」ことは明記されていましたので、そこへ「遺言内容を実現するため」と言葉が追加されたことで、遺言執行者の立場が明確になりました。
これで、スッキリしましたね。
遺言執行者は遺言者のために働くんです!
© 2014-2024 YOSHIZAWA INHERITANCE OFFICE