投稿日:2019年6月4日
平成最後の31年度税制改正で新設された『個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度(個人版事業承継税制)』。
「使える」のか「使えない」のかと聞かれたら、「ほとんど使う人はいないと思いますが、100人のうち数人“はまる”人がいるかもしれませんね」と答えるでしょう。
とは言え<使う人が少ないからよく分からない>では専門家としては片手落ちなので、【本制度で覚えておいて欲しいポイント】を10コ列挙します。
①10年間(2019年1月1日~2028年12月31日)の時限立法である。
②本制度の適用を受けるためには、5年(2019年4月1日~2024年3月31日)の間に「承継計画」を提出し都道府県の確認を受けなければならない。
・「承継計画」を提出したものの本制度の適用を受けないことになっても一切お咎めなし、デメリットなし
③先代も後継者も青色申告の承認を受けておかなければならない。
・先代は、相続開始時又は贈与前までに
・後継者は、相続税又は贈与税の申告期限までに
④後継者は、申告期限から3年毎に、必ず税務署へ「継続届出書」を提出し続けなければならない。
・一度でも失念したら納税猶予打ち切り、申告期限にさかのぼり「利子税含めて全額払ってね」となる
⑤小規模宅地等の特例「特定事業用宅地等」との選択適用である。
・ここが一番のポイント!
⑥先代の事業をそのまま承継する必要はなく、先代が事業の用に供していた事業用財産を後継者が利用すれば別の事業に転業しても納税猶予の適用を受けることができる。
・父がラーメン屋→その設備等事業用資産を子が使って蕎麦屋にした→納税猶予継続OK
⑦事業用資産から、明らかに事業用ではない債務の額を控除した額が納税猶予税額の基礎となるので、ドンブリ勘定の人は注意が必要。
⑧納税猶予の対象となった事業用資産を担保に供する必要がある。
・資金繰りのため銀行から融資を受ける場合、既に銀行の抵当権が1位だった場合等に注意が必要
⑨納税猶予対象となった事業用資産の担保価値について、見直しがある。
⑩事業用資産の全部又は一部を譲渡しても、1年以内に別の事業用資産を取得する見込みについて税務署長の承認を受け、かつ取得すれば納税猶予制度は継続する。
一番の問題は、誰に“はまる”のかと言うこと。
そこを考えるのが相続コンサルタントの醍醐味な訳です。
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