投稿日:2022年5月8日
民法(相続法)改正の目玉の一つだった配偶者居住権。
自宅を「住む権利」と「持つ権利」に分けて相続する新しい考え方です。
「住む権利」のことを「配偶者居住権」、「持つ権利」のことを「負担付所有権」と言います。
2020年に登記された配偶者居住権の件数は、法律が施行された4月から12月までの9か月間で合計129件(月平均14.3件)でしたが、2021年に登記された件数は合計880件(月平均73.3件)と大幅に増えました。
但し、配偶者居住権は登記しなければ成立しない訳ではなく、登記することでそこで暮らす配偶者が第三者から守られる(例えば、所有権を譲り受けた第三者からの立ち退きを拒否できる等)だけですので、登記していない配偶者居住権も相当数あるのではと思っています。
例えば、代表的な例としては二次相続税対策ですね。
父が死亡した場合、自宅について、母が配偶者居住権を、子が負担付所有権をそれぞれ相続します。次に、母が死亡すると配偶者居住権は消滅しますので、子は一次相続で取得した負担付所有権の負担だけで自宅の完全な所有権を相続することができるのです。
もちろん、母が長生きした場合はそれが実現するのが相当先になるとか、配偶者居住権は譲渡できない等デメリットもありますから、実際に想定通りに事が運ぶかどうかは分かりませんが、「配偶者居住権は節税対策として活用するのが正しい」的な解説も目にしますので、二次相続税対策として活用されている可能性はあると思います。
仲良し家族が二次相続税対策として配偶者居住権を活用するのであれば、わざわざ登記なんてしませんから。
「残された配偶者が安心して老後を過ごせるように」と言う制度創設の趣旨から外れ、本末転倒な感じがします。
そもそも配偶者居住権はメリットよりもデメリットの方が多い制度だと言われていますので、活用する場合は慎重に検討して下さい。
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