投稿日:2022年6月5日
親から相続した土地について、時価よりも路線価の方が高かった場合、面白くありませんよね。
「なんで相場よりも高い評価額(路線価)で税金を払わないといけないんだ!」と頭にきて、「だったら不動産鑑定士にお願いし、不動産鑑定評価額で申告しよう」と思う気持ちになるかもしれません。
実際に、そのようにアプローチしている不動産鑑定士もいます。
しかし、安易に考えちゃ駄目ですよ。
鑑定評価額で申告するためには、次のハードルを越えなければいけません。
①国税庁の財産評価基本通達に則った評価(路線価等)が合理的と言えない理由が存在すること。
②上記①の理由を、納税者が自ら立証しなければいけない。
つまり、単に路線価が相場より高いとか、時価よりも路線価が高いだけでは鑑定評価額での申告は認められず、通達がおかしいことを自ら立証しなければいけないのです。
また、不動産鑑定士は不動産の時価を決めると言われますが、これには少し補足が必要です。
例えば、争族になり、Bが「Aが相続する実家の時価は高過ぎる!ズルイ!」と主張したとします。弁護士を入れても話し合いがまとまらず、家庭裁判所の調停も成立せず、裁判(審判)になりました。
Bは不動産鑑定士の評価書を基に「実家の時価は2,000万円だ」と主張しました。Aも別の不動産鑑定士に依頼し「実家の時価は1,900万円だ」と主張しています。お互い歩み寄りがないため、裁判所がA及びBとは別の不動産鑑定士に依頼し「実家は1,950万円である」と結論付けました。
これ、争族あるあるです。
結局不動産鑑定士が時価を決めると言っても、物の値段には幅があるため、ある鑑定士が鑑定した結果=世の中に1つしかない時価ではありません。
更に、鑑定評価額で言う時価とは物の価値であり、実際に売れる値段ではありません。
売れるか否かは需要と供給であり、価値としての値段で必ず売れる訳ではありません。
個人的には「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」が時価な訳ですから、買う人がいない不動産の価値は0(ゼロ)だし、つまり評価も0(ゼロ)だと思っていますが…。
そもそも鑑定評価額で申告していいと言うルールはなく、通達が合理的ではないという(特別な事情がある)場合に限り、別の合理的な方法が認められていて、その一つが鑑定評価なんです。
感情的になる前に、何ができて、何ができないのか、専門家を交えしっかり話し合いましょう。
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