投稿日:2022年10月3日
以前、「夫が事故で急死した」と妻から相談を受けたことがありました。
夫は60歳、相談者である妻は58歳、お子さんはいらっしゃいません。
夫は自動車事故で亡くなりました。健康に不安を抱えていたという事情もなかったため、遺言書は作成していません。
夫の財産は、自宅と金融資産です。
この場合、相続人は妻だけと思っている方がいますが、違います。妻の他、夫の両親、或いは夫の兄弟姉妹甥姪も相続人になります。
夫には88歳になる母がいました。母は認知症で施設に入所しています。
つまり、相続人は妻と夫の母の2人、法定相続割合は「妻2/3+夫の母1/3」です。
夫の母は、娘(夫の妹)が後見人になっていました。娘は、父が死亡した際、自宅など主な財産を全て長男である兄が相続したことを快く思っていませんでした。また、母の介護等の面倒を押し付けられたとも思っています。
遺言書がない以上、妻は夫の母と遺産分割について話し合わなければいけません。しかし夫の母は判断能力がありませんので、後見人である夫の妹と話し合うことになります。しかも、夫の妹の背後には後見監督人である弁護士が控えています。
常識的に考えたら夫の財産は全て妻が相続するのが筋だと思いますが、夫の妹はここぞとばかりに反撃に出ました。母が相続すれば(母の死亡により)母の財産は全て自分が相続できますし、一次相続での恨みを晴らす絶好の機会でもあります。
後見監督人である弁護士も、母の立場や権利を守るのが仕事ですので、妹の主張を後押ししました。
結局、夫の母が1/3に相当する額の金銭を相続することで、妻は自宅を相続することができましたが、後味の悪い結果になりました。
万が一があるのが相続ですから、まだ若くても、元気でも、健康でも、早目早目に対策を講じておくべきですね。
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