投稿日:2022年12月21日
令和4年12月13日(火)付の新聞に、『家賃滞納で「明け渡し」違法~最高裁判決 借主側の保護重視~』の記事がありました。
争われたのは、借主と家賃保証会社が締結している契約書にある「借主が家賃を2か月以上滞納し、利用状況から見て居住していないと判断した場合、家賃保証会社が部屋を明け渡したとみなす」とある条項の有効性について。
今回最高裁の判断は賃貸実務に大きな影響を与えます。
「消費者の利益を一方的に害する」として訴えていたのは当事者に代わって訴訟を起こす適格消費者団体の「消費者支援機構関西」。
問題となったのは、次の2つの契約条項。
①借主が家賃を2か月以上滞納し、利用状況から見て居住していないと判断した場合、家賃保証会社が部屋を明け渡したとみなす。
②借主が家賃を3ヶ月以上滞納した場合、家賃保証会社が事前通告なく賃貸借契約を解除できる。
一審(大阪地裁)では、①の明け渡し条項のみ違法と判断されました。
二審(大阪高裁)では、「借主の不利益は限定的であり、条項には相応の合理性がある」として家賃保証会社を支持しました。
そして、最高裁は、①の明け渡し条項及び②賃貸借契約解除の両方とも「借主の権利が一方的に制限されている」と判断し、家賃保証会社の敗訴が確定しました。
結果は結果として受け止めるとして、改めて賃貸事業のリスクについて考えさせられました。
老後の生活のため、相続対策のため、遊休地の活用のため、賃貸経営を行う目的は様々ですが、
●あくまで賃貸経営は「事業」であり、事業にはリスクがつきものであること
●賃借権を有する入居者の権利は強い(守られる)
ことを忘れてはいけません。
「家賃を数か月滞納したら賃貸借契約を解除し無理やり追い出しても構わない」
「入居者が姿を現さなかったら入居者の私物を勝手に処分しても良い」
と勘違いしているオーナーも多いのではないでしょうか。
家賃の問題だけではなく、他の入居者との折り合い、近所との関係、ペット、建物の使用状況、ゴミ出し等地域のルール等、賃貸経営の質は入居者にかかっていると言っても過言ではありません。
例えアパートをゴミ屋敷にされたとしても、原状回復費用を当事者が負担できるとは限りません。
楽して儲かる話はありません。
賃貸事業に乗り出す前に、メリット・デメリットをしっかり整理し、納得の上で、覚悟を持って実行して下さい。
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