投稿日:2023年6月4日
令和5年4月27日に「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。
今まで「全て相続する(単純相続)」か「何も相続しない(相続放棄)」かしか選べなかった相続の仕方に、「一部だけ相続する(一部だけ相続しない)」という選択肢が加わったことになります。
しかし、果たして実際使えるのでしょうか…。今回はその辺りを実務家目線で考えてみたいと思います。
まず、簡単に制度の概要をまとめておきます。
①申請できるのは、相続又は遺贈により土地を取得した相続人に限られますので、贈与や売買によって取得した人や、相続人ではない人は申請することができません。
②共有名義の土地は共有者全員で申請しないといけないので、共有者の足並みが揃わないと申請することができません。
③相続人以外の共有者がいても、共有者の一人が相続又は遺贈により土地を取得した相続人であり、その相続人が申請するのであれば相続人以外の共有者も申請することができます。
④令和5年4月27日より前に開始した相続により取得した土地であっても申請することができます。
⑤申請できる土地は「却下要件」に該当しないことが条件です。
⑥承認されるのは「不承認要件」に該当しない土地だけです。
問題は上記⑤「却下要件」と⑥「不承認要件」が厳し過ぎること。
詳細は省略しますが、要するに「売れないような土地、誰もいらないような土地は国も引き取りません」と考えると分かり易いと思います。
普通に考えたら、第三者に売ることができる土地であれば、審査手数料(土地1筆につき1万4千円)や承認された場合の負担金(最低20万円)を払ってまで国に引き取ってもらおうと考えないはずです。
例え10万円であっても売れるのなら売った方が得になるのに、最低でも21万4千円払って国に「引き取って下さい」と誰が申請するのでしょうか?
ですので、何度考えても一体どのような土地が国庫に帰属されるのか、イメージが沸かないんです。
国としては公共工事等を円滑に進めるために所有者不明土地を減らしたいと考えこの制度を創設したのですが、「絵に描いた餅」となりそうな予感がします。
気持ちは分かるのですが…、非常に残念な制度になっています。
法附則に「法施行後5年経過したら施行の状況を確認し、必要な措置を講じる」と書いてありますので、国の施策として必要な地域においては柔軟に対応するとか、国防上の観点から条件を緩和する等の見直しに期待しましょう。
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