投稿日:2024年3月13日
株式会社吉澤相続事務所として相続セミナーや研修の講師を務め、ちょうど10年が経ちました。
この10年で参加者(受講者)のレベルが随分上がったなあと感じる一方、応用編ばかり語りたがる偏った知識の人が増えたようにも感じます。
昔は参加者の相続レベルが今ほど高くなく、知識も乏しかったような気がします。基本的なことでも「へえ~」と感心してくれましたし、少し捻ったコンサルテクを紹介すれば驚いてくれました。
しかし、最近は本に書いていない裏技だったり、弁護士や税理士しか知らないような専門的な話を披露しないとあまり驚いてくれません。
では参加者(受講者)のレベルが(単純に)上がったと考えて良いのでしょうか?
僕は、やたら難しいテクニカルな話をする人が増えただけで、本来相続コンサルに求められるスキルはそれ程上がっていないように感じています。
もちろん10年前と比較したら全体的なレベルは上がっているのでしょうが、「テクニック論だけが一人歩きしているような印象」といったらイメージが掴めるでしょうか。
最近、「複層型信託を組成し~」「疑似DESを活用すれば~」「無返出して会社に資産を移転し~」等、こちらが回答するのに苦労するような難しい質問をしてくる人が増えました。
しかし、そういう人に限って基本ができていないんです。
そもそも、誰が相続人か分かっていない、相続税も計算できない、財産を把握していない、民法と税法の区別がついていない…。なのに、やたら難しいテクニカルな話ばかり披露したがる…。
恐らくそういった類の研修が増え、耳年増になっているのでしょうね。
特に中小法人や地主、医者等を相手にしている人に多い気がします。
相談する側にとっても、あまり聞いたことがない難しい対策の方が凄い対策に聞こえてしまうといった側面もあると思います。日本では未だに相談は無料の文化が根強いですから、コンサルティング報酬を得る(或いはコンサルティング報酬見合いの商品を購入してもらう)ためには、ややこしいスキームである必要があるのだと思います。
僕自身この壁をどうやって乗り越えたら良いのだろうかと、いつも頭を悩ませています。
実際、相続対策は意外と簡単でシンプルなんです。毎年110万円ずつ贈与するだけで十分節税効果は得られますし、きちんと遺言を残しておけば争族対策につながります。しかし、それだけではありがたがられないし、稼ぎにつながらない。
だから難しくややこしいスキームを語る必要がある。
と考えると、相談者側がもっと賢くならないといけないんでしょうね。難しくややこしいことが偉い訳ではないことを理解しないと。
本気で相続に強くなりたいのであれば、まずは基本をしっかり勉強しましょう。基礎がしっかりしていない建物はいつか壊れます。頑丈な基礎の上に、知識や知恵を積み上げ、経験を重ねていきましょう。
それが本物への近道です。
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