投稿日:2024年12月11日
中小企業経営者のAさんは、会社が銀行から借りている多額の借入金の連帯保証人となっています。会社の経営は芳しくなく、ここ数年赤字が続き、今後も上向く見込みはなく、いつ銀行から保証債務の履行を求められても不思議ではありません。
Aさんが死亡したら、遺族は保証債務の承継を嫌がり相続を放棄する可能性が高いでしょう。そうなると、銀行は会社に対する融資(貸付金)を回収することができず、貸し倒れとなり、最悪会社は倒産してしまうかもしれません。
自分が作った会社が倒産するのは困ると、Aさんは銀行に相談し、大手弁護士法人の紹介を受け、同弁護士法人がM&Aを軸とした再建計画を立案しました。Aさんはその提案に沿ってこの問題を解決することにしました。
ところが、具体的に動き始めた矢先、Aさんが急逝してしまったのです。
予想した通り、遺族は多額の保証債務の承継を嫌がり、相続を放棄することにしました。そして、遺族が有していた自社株も無償で社員へ譲り、会社の経営権を完全に手放すことにしました。
相続を放棄するとしても、銀行や取引先・従業員等に対する説明や関係者との調整等に時間がかかります。そこで、遺族は家庭裁判所に相続放棄に係る熟慮期間の伸長を申し立て、実際の相続放棄を数か月後に先延ばしすることにしました。
遺族の方針を知り慌てたのは銀行です。多額の焦げ付きが生じることが確実となったため、メインバンクを中心に大騒ぎです。
また、弁護士法人も、このままではM&Aを軸とした再建計画の履行により得られるはずだった多額の報酬がふいになってしまうため、銀行や顧問税理士等と一緒に「何とか相続してもらえないか」と遺族の説得にかかりました。
数か月後、周囲の説得も虚しく遺族は予定通り家庭裁判所に相続放棄を申述し、受理され、弁護士法人の立案した再建計画は海の藻屑と散りました。
遺族は改めて弁護士法人に今後のことについて相談した所、「我々はM&Aによる再建計画のための存在であり、その計画がなくなった以上もう関係ない」と断られてしまいました。
遺族は、父から「銀行から紹介された弁護士法人は、会社の再建を含め、相続対策全般に関して相談に乗ってくれている」と聞いていたのですが、弁護士法人にはそのつもりがなく、最初からM&Aを軸にした再建計画を遂行したかっただけだったのです。「会社や遺族を助ける」というのは言葉だけだったのです。
つまり、弁護士法人は、M&Aをやるなら関与するが、やらないなら関与しないと、最初から答えが決まっていたのです。
この事案から貴方は何を学びますか?
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