ブログ「相続の現場から」

特別寄与料は酷な制度

投稿日:2020年5月11日

夫の父(義父)を一生懸命介護したのに、結局何も報われなかった…よく耳にする話です。

 

そこで、「相続人以外の親族にも何等かの金銭を交付してあげよう」として創設されたのが民法1050条(特別の寄与)、いわゆる特別寄与料です。

 

特別寄与料が請求できるのだから、「長男の嫁なんだから当たり前」「両親と同居しているんだから面倒を診るのが当たり前」と言われても泣き寝入りしなくて良い、なんて安易に考えちゃ駄目ですよ。

 

①実際のところ、長男の嫁が相続人である長男の兄弟姉妹に対し特別寄与料を請求できると思いますか?

 

「カネ目当てで親父の面倒診てたのか!」

「まだ親父が死んで6ヶ月しか経ってないのにお金の話を持ち出すなんて失礼だ!」(家庭裁判所に特別寄与料の額を決めてもらうためには相続の開始を知った時から6ヶ月以内に請求する必要があります)

って険悪な雰囲気になっちゃいますよ。

 

相当メンタルが強くないと請求できないでしょうね。

その後の親戚関係も相当寒くなるだろうし。

 

②仮に請求したとして、いくらもらえると思います?

 

特別寄与料の額は、制度の趣旨から療養看護にかかった費用の精算的な計算になりますので、もらえたとしても専門家に依頼した場合の7割程度でしょうね。

 

精神的な負担を含めた費用対効果で考えた場合、驚くくらい少額になることがほとんどです。

 

③また、特別寄与料を受け取った場合、その後の課税関係がどうなるかご存知ですか?

 

長男の嫁は相続人ではありませんが、特別寄与料を義父から遺贈により取得したとみなされますので、相続税を納税する義務が生じ、かつその額は2割増しになります。

 

ね、現場目線で考えたら恐ろしくて請求できないでしょ?

 

とは言え、特別寄与料が創設されたことにより、相続が発生しても多様化する夫婦(パートナー)の在り方や生き方に(ある程度)対応できる制度が整ったと言えるかもしれません。

 

相続人「寄与分(民法904条の2)」により遺産分割が調整されます。

親族「特別寄与料(民法1050条)」により金銭を受け取れます。

親族以外「特別縁故者(民法958条の3)」により相続財産の分与を受けられます。

 

相続対策は出口から逆算して考える必要があります。

 

何が一番有益かどうすべきか何が出来るのか、色々な角度から検討しましょう。

 

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