投稿日:2021年8月13日
専門誌が国税に対して行った資産税の実態調査により、興味深い“事実”が浮かび上がりました。
相続財産に占める割合が約4割と一番高いのが不動産。特に、土地の評価が相続税に大きな影響を与えるのは今も昔も変わりません。
土地について実地調査した結果「申告漏れ」と「評価誤り」が認められた割合を、相続財産の課税価格階層別に見てみると、以下の結果となったそうです。
●低階級(1億円未満)…申告漏れ41.7%、評価誤り6.1%
●中階級(1億円以上~5億円未満)…申告漏れ45.8%、評価誤り55.6%
●高階級(5億円以上)…申告漏れ12.5%、評価誤り38.3%
相続税を申告する際、相続財産から土地が漏れている割合が一番高いのは低階級です。
この理由として、低階級は相続税がかからない、もしくはかかったとしてもそれ程大きな金額ではない層ですから、そもそも相続税の申告納税に気が付いていない、或いは気が付いていたとしても税理士報酬を回避するため税理士に相談していない状況が考えられます。なので、土地が申告から漏れてしまった割合が高いと考えられます。
また、低階級が保有する土地は自宅だけが多いでしょうし、仮に自宅以外に土地を保有していたとしても複雑な物件はないでしょうから、評価はそれほど難しくなく、申告納税に気が付いていれば、誰が申告したとしても正しく評価できているのだと思います。
一方、高階級に目を向けると、申告漏れは少ないものの、評価誤りの割合が高くなっています。
高階級は相当な額の財産を保有しているいわゆる“資産家”ですから、相続税の申告納税は間違いなく認識しています。しかも、自宅以外にも複数の物件を保有し、評価を引き下げるために賃貸したり、資産管理会社を設立したり、色々なテクニックを駆使していることでしょう。もちろん顧問税理士もしっかりついているはずです。
なので申告漏れは少ない…、しかし評価誤りの割合が高い…。
つまり、この結果から「土地の評価について不慣れな税理士が多い」実態が浮き彫りになりました。
税理士にとって「不動産は鬼門」と言われています。税理士試験に不動産はありませんし、周囲に不動産を得意としている先輩もいません。なのに相続財産に占める割合が一番高いのが不動産…。(今でこそ相続財産に占める不動産の割合は約4割ですが、バブル期は約8割が不動産でした。)
不動産を得意としているのは、資産税に特化しているごく一部の税理士だけで、ほとんどの税理士が苦手としています。
相続税に限らず、自社株を評価する際会社が保有する土地の評価を間違えたために自社株の評価額を間違えてしまい大問題となった税理士もいます。
*ちなみに、国税(税務署)も不動産が苦手です。なので、相続税の申告において、不動産を苦手とする税理士が作成した申告書を、不動産を苦手とする税務署が受け付けるという何とも不思議な光景が繰り広げられます。
尊敬する税理士が「相続に強い税理士=不動産に強い税理士、と考えてもあながち間違いではない」と言っていたことを思い出しました。
相続に携わる人にとって不動産の知識は必須です。
苦手であってもそこを避けて通ることはできません。
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