投稿日:2016年12月29日
昨今相続業界で流行りの『民事信託』、家族が担い手となるため「家族信託」とも言われています。
『信託』は相続の切り札、不可能を可能にする魔法のスキームのように言われていますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
『信託』についてメリットばかり強調されていますので、きちんとメリット/デメリットを整理してみたいと思います。
<信託のメリット>
①信頼できる立場の人に頼めば、安定的に資産を管理することが出来る
②柔軟に権利義務等スキームを設定することが出来る
③関係者の破綻等から財産を守ることが出来る
④「夫→後妻→先妻の子」等、次の相続まで承継の流れを決めておくことが出来る(受益者連続型信託)
⑤認知症等判断能力が衰えても、財産管理に支障をきたさない
<信託のデメリット>
①未来永劫、受託者が信頼できる行動、委託者の意に沿った条件(内容)で資産を管理してくれるとは限らない
②強い立場の人、声の大きい人の意見が色濃く反映された契約条件になり易い
③実際に信託財産が分別管理されているかどうか不透明
④委託者死亡後、途中での信託契約条件変更は難しい
⑤実際手に入れる経済価値よりも相続税評価額が高額になる場合がある(例:受益者としてアパートの賃料収入のみを相続した場合、アパート処分権を有していないにも関わらずアパートを相続したものとして相続税が課税されてしまう)
⑥遺留分の問題が残る
⑦信託に関与なかった相続人と後日トラブルになる可能性がある
まだ制度が出来て日が浅く、設定された事例も少ないのが現状です。
また、馴染みの薄い(難しい)言葉が数多く登場するため、一般の方、特に高齢者の方から理解を得るのが難しく、案件数が増えない理由の一つになっています。
そもそも、「自分で理解できないことはやらない方が無難」との考え方もあり、その意味では正しいのかもしれません。
今後、事例数が増えれば必然的にトラブルも増え、何がどう問題なのかが整理され、様々な議論を経て詳細が詰められていくものと思われます。
取りあえず、揉めない相続であれば信託を活用しても問題にならないでしょうね。
(揉めないなら、そもそも信託すら使う必要ないのかもしれませんが…。)
少なくても、『信託』があたかも魔法の杖であるかのように説明している業種を見れば、どの業界にとって美味しいのか、自然と見えてくるのではないでしょうか。
相続対策における『信託』は一つの<手段>に過ぎませんから、取り組みを<目的>としては本末転倒です。
僕は是々非々のスタンスです。
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