投稿日:2018年1月4日
ある会社の事業承継の相談に応じた時の話しです。
二代目社長は、先代保有の自社株に係る相続税の負担、会社に関与していない兄弟の処遇、事業の継続的な発展等で悩んでいました。
その会社は、総務及び財務担当としてメインバンクから出向者(Aさんとします)を受け入れていました。
出向者である元銀行員Aさんは中小企業畑が長く、複数の支店長を歴任し、人の話を聞ける人物だったため、二代目社長の懐刀となり、転籍し、番頭的に個人の相続問題も一緒に考える立場になっていました。
先日、二代目社長から「僕は自社株や会社に関係する資産を相続するので、父が死亡した場合、父個人の不動産や金融資産はすべて僕以外の兄弟へ相続させたい。実際に相続が発生したら僕は相続を放棄しても良い。しかし、父個人の財産の過半は不動産であり、兄弟姉妹は相続税納税資金の確保に苦労すると思う。そこで、今の内から皆が困らないようにロードマップを作っておきたい。」と相談がありました。
素晴らしい二代目ですね。
二代目社長が「(番頭の)Aが作成した概算の相続税評価額、相続税の試算表です。対策案の骨子も書いてあります。この案をベースに親族で協議を重ねています。」と言ってメモを見せてくれました。
ん??????
●今年1月から自社株評価の計算方法が改正されています。改正後で計算してますか?
●会社規模区分も改正されています。
●生前に相続放棄は出来ません。
●相続放棄しても相続税総額に変わりありません。
●相続した不動産の取得費及び取得日は父から引き継ぎます。
●取得費加算は平成26年に改正されています。
●不動産の評価が間違っています。
●そもそも相続税の計算式が間違っています。実際の税負担はこの半分以下になるでしょう。
Aさんが、出向した会社のために一生懸命努力し作成したメモです。
年下の二代目のために、支店長まで歴任されたAさんが汗かきながら手を動かして作成した力作です。
まったく悪気はないと思います。
人として素晴らしいですし、敬意を表します。
ですが、相続対策・事業承継の基本は「現状把握」です。
現状をしっかり把握しなければ問題の所在がどこにあるのか判明しません。
問題点を浮き彫りにしない限り、具体的な対策案は考えられません。
前提条件が間違っていたら、その後どれだけ積み木を重ねていっても、最後には崩れてしまいます。
土台(基礎)が重要です。
ですから、我々は勉強するし、専門家をタッグを組むし、予断を許さずニュートラルに物事を見るのです。
と言うことで、顧問税理士を巻き込み、それぞれの得意分野を生かし、ゼロベースで再検討するよう助言しました。
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