ブログ「相続の現場から」

相続の現場から『子なし夫婦の保険受取人は誰…』

投稿日:2018年8月6日

子どものいない夫婦が旅行中に交通事故で同時に死亡してしまいました。

二人とも即死だったそうです。

 

夫は「妻を受取人と指定した生命保険」に加入しており、妻は「夫を受取人と指定した生命保険」に加入していました。

 

さて、この保険金は誰が受け取ることになるのでしょうか?

 

この場合、「指定されていた受取人の相続人」が保険金を受け取ることになります。(保険法46条)

 

民法では、同時死亡の場合互いに相続が発生しないことになっています。

 

夫が受け取るべきだった「妻が被保険者になっている保険金」を受け取るのは、夫の唯一の相続人である高齢のでした。

夫の母は認知症を患い特別養護老人ホームに入所中であり、手続きは家庭裁判所を巻き込みかなり時間がかかりました。

 

妻が受け取るべきであった「夫が被保険者になっている保険金」を受け取るのは、妻の相続人です。

妻の両親は既に他界していたため兄弟姉妹が相続人になりますが、兄も既に他界しており子(甥姪)2人が代襲し、生存している2人と合わせた計4人に権利がありました。

4人は日頃から付き合いがない親族であり、居住地も皆離れていたため、状況を理解してもらうために相当な時間と労力がかかりました。

 

ところで、相続税法上、生命保険金には一定の要件の下非課税枠があります(相続税法12条)。

この場合、受け取った親族に非課税枠の適用はあるのでしょうか?

 

夫の母は妻の相続人ではありませんので、「妻が死亡したことにより支給された保険金」を受け取っても非課税枠の適用はありません。

 

妻の甥姪及び妹2人は夫の相続人ではありませんので、「夫が死亡したことにより支給された保険金」を受け取っても非課税枠の適用はありません。

 

子どもがいない夫婦の場合遺言を作成しておくべきと思いますが、更に一歩踏み込み、万が一を考え、遺言の予備的文言として保険金受取人を再指定しておいた方が無難かもしれません。

 

実務は深いですね。

 

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