投稿日:2020年3月26日
前回、離婚により悲惨な結果となってしまった開業医の例を紹介しました。
離婚時に特に揉めるのが財産分与です。
そこで、離婚時に財産分与で揉めないようにするための制度、
『夫婦財産契約』(民法755条)をご紹介します。
例えば、妻に先立たれた高齢の父が再婚し、その後離婚した場合、父の財産の半分が後妻に渡ってしまう可能性があります。
子としてはたまったもんじゃありません。
財産分与の対象は「婚姻してから離婚時までに夫婦で築いた財産」ですが、実際にどこからどこまでが対象なのか、明確に線引きするのは難しく、往々にしてトラブルが生じます。
結局、離婚時に父が保有していた財産の半分近くを後妻が持っていく…可能性は否めません。
もし、父が再婚相手と『夫婦財産契約』(婚前契約と言うこともあります)を締結していれば、このような離婚時のトラブルを最小限に食い止めることが出来るかもしれません。
民法では、夫婦の財産について「財産契約制」(民法755条~759条)と「法定財産制」(民法760条以下)の2つが定められています。
『夫婦財産契約』が締結されていれば同契約が優先され、同契約がない場合「法定財産制」によることになります。
例えば、「財産目録を添付した上で、再婚前から夫が保有する不動産や金融資産は夫固有の財産とする」と明記しておけば、万が一離婚することとなっても、後妻へ分与する財産を婚姻後のものに限定することが出来ます。
この『夫婦財産契約』は、
①婚姻前に締結しなければならない
②登記しなければ相続人や第三者へ対抗できない
ことに注意が必要です。
『夫婦財産契約』を結んでいる夫婦は年10組程度と、利用する人はほとんどいません。
欧米では、著名人同士の婚姻の場合、結構な確率で結んでいるようですが、日本ではまだまだです。
と言っても、結婚する前に「互いの財産について契約しておきたいんだけど…」と切り出したら、結婚そのものが破談になる可能性が高いかもしれませんね。
その辺りは“力関係”によるのでしょうが…。
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