投稿日:2020年12月3日
以前「兄が亡くなったのですが、葬儀費用を兄の財産から支払ってもいいでしょうか?」と相談を受けました。
お兄様は独身、賃貸アパートに一人暮らししていました。めぼしい財産は預貯金と現金の数万円だけ、アパートの郵便受けに残されていたハガキから消費者金融の借金が見つかりました。
相続人は相談者である弟と妹の2人。兄弟は離れて暮らしており、ここ数年会ったことも話したこともありません。お兄様は孤独死で、アパート住民から「異臭がする」と警察に通報があり、弟は警察からの知らせで兄の死亡を知りました。
消費者金融からの借金が見つかったこともあり、弟はお兄様の相続を放棄する予定です。
一方、妹は「兄とは一切関わりたくない」と、放棄するとも相続するとも言わず「とにかく関わりたくない」の一点張りで、最近は弟からの電話にも出ない状態です。
弟からの相談は次の2つ。
①簡単な葬儀を行ったのだが、その費用は兄の金融資産から支払っても良いか?
②アパートの大家から「早く賃貸借契約を解約し、故人の荷物を処分して欲しい。じゃないと次の入居者が入れないので困る。」と言われているのだが、どうしたら良いか?
どちらかと言うと、弁護士や司法書士・行政書士等法律の専門家に対する相談ですね。
さて皆さん、どう思いますか?
①簡単な葬儀を行ったのだが、その費用は兄の金融資産から支払っても良いか?
→お兄様の財産から支払うと、相続放棄できない可能性があります。
と言うのも、葬儀は故人が出すものではなく、遺族が出すものだからです。過去の裁判例や文献では「葬儀は遺族の当然の行為であり、故人の遺産からそれらを支出したとしても処分行為に該当しない」とされた例もありますので、常識の範囲内であれば相続放棄を認めてもらえると思いますが、絶対ではありませんので慎重に対応すべきと思います。弟が自分のお金で葬儀費用を負担する分には何ら問題ありませんが、お兄様の財産から支払った場合遺産に手を付け、それが処分行為とみなされた場合相続放棄できなくなってしまいますのでご注意下さい。
②アパートの大家から「早く賃貸借契約を解約し、故人の荷物を処分して欲しい。じゃないと次の入居者が入れないので困る。」と言われているのだが、どうしたら良いか?
→賃貸借契約は相続されますので、弟単独では解約できません。
賃貸借契約の解除は「管理行為」であり、兄弟共有の場合同行為をするためには過半数の賛成が必要になります。つまり、弟一人では過半数を満たしませんので、弟と妹が合意の上で処理する必要があります。妹の協力が得られず解約できない場合、その間ずっと家賃を支払う必要があります。
また、家財等アパートに残された物品も相続財産であり、ゴミの処分程度であれば問題ありませんが「交換価値がある財産」を処分した場合遺産に手を付けたことになり相続放棄できなくなる可能性があります。例えば、お兄様の財産を買取業者に買い取ってもらった場合、相続放棄出来なくなる可能性が高いと言えます。
ね、怖いでしょ?
で、どうすれば良いか?そこを考えるのが相続コンサルタントの役割です。
*念のため言っておきますが、もちろん本件は弁護士と一緒に対応しましたよ。
© 2014-2024 YOSHIZAWA INHERITANCE OFFICE