投稿日:2021年9月3日
高齢化の進展と本格的な大相続時代を迎え、家族信託(正式には民事信託)の話をよく耳にするようになりました。
改正信託法が施行されたのは平成19年9月30日ですから、家族信託が提案されてまだ10年強と、比較的新しい制度と言えます。
お客様からの相談で増えているが、
①家族信託の提案を受けているのだが、どう思うか?
②家族信託を組んでいるのだが、どう思うか?
の2つです。
家族信託は、同制度を組成することで手数料を得られる人からしか提案を受けません。(ビジネスと考えたら当たり前の話ですが…)つまり、その時点で家族信託を組成すること自体が<目的>化していることが分かります。本来家族信託はスキームのはずなのに、現場では手数料を目的とした商品として取り扱われています。
信託の相談に応じ「問題だな」と感じるのは、
■正しく信託を理解している相談者に会ったことがない
■デメリットを理解している人に会ったことがない
ことです。
「信託を組成して欲しい」と依頼した相談者はほとんどいないはずです。
何らかの問題に対し「どうしたら良いか」と相談しただけでしょう。であれば、助言するのは解決策です。解決策の一つに家族信託があるのは分かりますが、他にどうような案があったのか、教えてもらったと言う話はあまり聞きません。皆さん家族信託がいかに優れているかしか聞いていないのです。
つまり、最初から“答え”が決まっているのです。
そもそも、家族信託が真に相談者のためになるスキームであれば、もっと手軽に活用でき、相談者の理解も進み、負担も少なく、普及するはずです。まだ10年強しか経っていないのだからこれからの課題と言われればその通りですが、逆に10年強しか経っていないから問題点が出尽くしていないとも言えます。
また、家族信託がスペシャルな案であれば、相続業界全体で応援団も結成されるはずなのに、「昔から相続に携わっているその道の第一人者が信託の活用を大々的に推奨している」と言う話しを聞いたことは(僕は)ありません。
どちらかと言うと、相続ブームが到来してから相続業務に進出した人や、相続に携わった期間が短い人、不動産を動かしたい人が信託を支持しているように感じます。特に、不動産業界の力の入れ具合が大きいのではないでしょうか。そこに信託の問題があると思っています。つまり、不動産を動かしたい人達が相続対策を口実に信託を組成し自分達の利益につなげる構図です。
信託組成に伴う手数料獲得のために、商品として売られているだけではないですか?
相談者にとって家族信託が一番良い方法であれば、間違いなく僕も家族信託を推奨します。実は、過去何度も家族信託を一つの案として提示したことがあるのですが、なかなか組成に至りません。相談者に複数の案を提示し、それぞれの案のメリット・デメリット、費用対効果等について説明すると、相談者が家族信託以外の案を選択するからです。
僕は相続コンサルタントです。特定の商品を取り扱わないため、誘導はありません。キックバックも受け取らないので、忖度も生じません。報酬を払って頂く相談者だけを向いて案件に取り組みます。相談者に対し行うのは提案であり、販売ではありません。
最初から答えが決まっていたら、それはセールスです。
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