投稿日:2024年10月2日
先日厚生労働省が公表した年金の健康診断といわれる5年に一度の「財政検証」をベースに、今秋から政府・与党が「年金制度改革」について話し合われます。
とりあえず現在60歳までとなっている国民年金の保険料納付期間を延長する案は見送りとなりましたが、その他の改革案については政治的な背景を基に決着してしまうのでは…と危惧しています。
一番の焦点はパート労働者の加入要件の緩和です。
今年の10月からは、企業規模が51人以上の会社で働く場合、①月額賃金が8.8万円(年収106万円)以上、②1週間の所定労働時間が20時間以上の要件を満たすと社会保険に加入する義務が生じます。
この加入要件を引き下げれば、大幅に加入者数が増えることにより財政は安定しますが、「将来もらえる年金よりも今の現金」の言葉に代表されるように、今お金が必要だから働いている人にとっては社会保険加入により手取りが減ってしまうことは大問題です。
恐らく、社会保険に加入しなくてもいいように就業調整する人も出てくるでしょうから、そうなると人手不足に拍車がかかってしまいます。
また、社会保険料は労使折半ですから、雇用する会社にとっても負担が増す事態となってしまいます。
もう一つ報道で気になったのは、会社員が加入している厚生年金の財源を基礎年金(国民年金)に回す案についてです。
(難しい話なので詳細は省略しますが)厚生労働省によると、対象となるのは「夫婦2人で40年間の世帯年収が平均2160万円以上の世帯」だけだそうなので、高所得者が損をすることになってしまいます。
税金もそうですが、高所得者から搾取するのは昔から日本のお家芸です。所得税も相続税も資産家からたくさん税金を取る累進税率の構造となっています。社会保険も「富の再分配」の名の下、高所者からたくさん社会保険料を徴収する仕組みになっています。
このままでは本当のお金持ちは日本からいなくなり、金太郎飴のように中間層しかいないスラム化が進んでしまうのではないでしょうか。
頑張っても搾取される、報われないとなると、ある意味頑張る理由がなくなってしまいます。
持続的な経済の成長と景気の下支えのためには、高所得者による消費の拡大が欠かせません。
平等・公平も大事ですが、支え合いを意識し過ぎるといつか共倒れになってしまうのではないでしょうか。
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