投稿日:2021年12月26日
相続税対策として、90歳を超える札幌在住の高齢者が死亡する約3年前に銀行等から10億円を超える借金をして杉並と川崎にマンションをそれぞれ1棟ずつ取得し相続税をゼロにした事案(通称「札幌事案」)について、最高裁が当事者の意見を聞く上告審弁論を開催すると決めました。
これはちょっと見逃せない事態になってきましたね。
納税者(相続人)は「国税庁が定めた財産評価基本通達(以下「通達」といいます)に則り財産を評価しているのだから問題ない」と主張しています。
これに対し国税は「通達評価に馴染まない(著しく不適当)特別な事情があるのだから時価(鑑定評価)で評価すべき」と主張しています。
国税不服審判所、地裁、高裁はすべて国税を支持し納税者の主張を斥けました。
そこで、納税者は最高裁へ上告及び上告受理申立てを行いました。
最高裁では、原則として原審の事実認定を基に、原審の判断が憲法に違反していないか、過去の判例と異なる判断を下していないか等についてだけ判断します。
最高裁への上告及び上告受理申立てはそのほとんどが門前払いされる高い壁ですので、果たしてどうなるか…と思っていたところ、なんと、最高裁が期日を開催する(口頭弁論を行う)と言うではないですか!
つまり、最高裁が原審の判断を変更する、もっと踏み込んで考えれば控訴審判決が破棄される可能性が出てきたのです。
「借金して投資用不動産を購入」或いは「借金してアパート建築」は相続税対策としてポピュラーな手法の一つです。
通達が馴染まない場合に抜かれる国税の“伝家の宝刀”「総則6項」がどのような場合に許されるのか、最高裁がどのような解釈の下で判断を下すのか、見逃せませんね。
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