投稿日:2022年1月24日
昨今相続業界でよく耳にする民事信託(通称:家族信託)。
長い老後生活のケア、リスクヘッジを考えた場合の相続対策の一つですが、相続コンサルタント目線で考えた場合、その取り組み姿勢に疑問を感じます。
相続対策には正解がありません。相談者が良ければそれが正解であり、相談に応じた側が自身の趣味趣向を押し付けるものではなく、ましてや自分が売りたい商品をセールスするものでもありません。
相談者は「どうしたら良いか」「何か良い方法はないか」と相談しているのです。であれば、相談者の悩みや問題の解決につながる解決策(案)を(できれば複数)提示するのが相談に応じたコンサルタントの役割なはずです。
僕が信頼し、長年通っている歯医者さんは「少しでも歯を抜かないように」という考えの下、複数の治療方法を提示し、僕の要望に耳を傾けながら最良の方法で治療してくれます。
その先生にインプラントについて伺ったところ、「あれやると儲かるんだよね。でも、抜かなくていい歯も抜いて施術しているかもしれないし、せっかく自分の歯があるんだったら、少しでも自分の歯を長く使えるようにするのが僕らの役目だと思うんだよね。あ、だから僕は儲からないのか(笑)まあ、インプラントしか方法がないんだったらやるけどね。」とおっしゃっていました。
「これって、今の信託を取り巻く状況と同じだな」と思いました。
相談者は「歯を抜いて下さい」なんて言っていません。「何か良い方法はありませんか?」と相談に来ているのです。であれば、問題の解決につながる対策案を複数考え、それぞれのメリ・デメを整理し、その中から相談者の意向に合った方法を一緒に組み立てていくのが相続コンサルタントだと思うのです。
信託を組成すれば報酬が得られると言う“答え”が決まっている人に相談した場合、間違いなく最初から“決め打ち”で信託を勧められるでしょう。そこに選択肢もなければ、相談者の意向もありません。
その人はコンサルタントではなくセールスマンです。
表向き「解決しますよ」と言っておきながら、最初から治療方法が決まっています。別の選択肢があったかもしれないのに、検討すらさせてもらえないのでは患者さんがかわいそうです。
信託は対策の一つの方法に過ぎません。相続対策のイチ商品とも言えます。
僕は少しでも患者さんの負担が軽くなるように、それでいてなるべく簡単な方法がないか考えます。考え尽くした結果信託だとなったら、間違いなく信託を勧めます。過去何度か信託が一番希望に沿いそうだと思い提案したこともあります。
しかし、最終的に決断するのは相談者です。こちらがセールスするものではありません。
1日でも長く自分の歯で美味しく食べられるように、今後も知恵を絞っていきたいと思います。
© 2014-2024 YOSHIZAWA INHERITANCE OFFICE