ブログ「相続の現場から」

相続実務ワンポイント『同族会社の債務免除と「みなし贈与」』

投稿日:2026年6月1日

同族会社の経営者が、会社に自らのお金を貸し付けているケースがあります。

 

会社から見ると「役員借入金」、経営者から見ると「貸付金」です。

 

銀行から借りるのが面倒、銀行から借りることができないといった資金調達の手段として利用されるケースもあれば、役員報酬を支給することができないため役員借入金として処理した等資金繰りの関係からそのような形となっているものまで、その理由は様々です。

 

貸付金は相続財産ですから、経営者が死亡した場合相続税の対象になります。

 

会社がすぐに返済してれるなら問題ありませんが、会社に返済原資がなく、しかも将来の業績見通しも明るくない場合、遺族は将来返済されないかもしれない財産について相続税を負担する羽目に陥ります。

 

そのため、どうせ返済してもらえないのだから相続税がかかるのはもったいないと、経営者が高齢になってから会社に対し貸付金の返済を免除する場合があります。このことを債権放棄と言います。

 

経営者は単に貸付金という債権を放棄するだけで税金はかかりません。貸したお金が返ってこない(=損している)だけですから。

 

一方、債務を免除してもらった法人には受贈益が生じるため法人税等がかかってしまいます。

 

そこで、法人が赤字であるとか、繰越欠損金がある、退職金等多額の支払いがある等、利益にぶつけられる損失や経費がある時に債務免除してもらうのが一般的です。

 

前置きが長くなりましたが、ここらかが本題です。

 

経営者が同族会社に対して有する債権を放棄すると、債務の返済を免除された会社の資産価値が上がり、株価が上昇します。

 

株主にとって嬉しいことではありますが、この株価上昇分は、経営者から株主への贈与があったとみなされるため株主に贈与税が課せられます。これが相続税法第9条に定められた「みなし贈与」です。

 

この「みなし贈与」は外形的に分かりにくく、しかも計算しないと数字が出ないため、贈与税の申告・納税を怠っている人が多いのですが、最近相続に関する税務調査の中で過去の「みなし贈与」が発覚するケースが増えているそうです。

 

暦年課税制度の贈与(いわゆる「110万円の贈与」)であれば、相続開始前3年以内(将来的には7年以内)に発生した「みなし贈与」が相続財産に加算されますし、相続時精算課税制度であれば、(令和6年以後の年110万円以内を除き)制度の適用を受けた後に発生した全ての「みなし贈与」が相続財産に加算されます。

 

もちろん贈与税の期限後申告も必要ですし、延滞税や加算税もかかります。

 

同族会社経営者の相続対策は、個人と法人の両面からチェックしないと上手くいきませんね。

 

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