投稿日:2026年8月4日
「贈与の事実を明確にしておくため、110万円より少し多く贈与し贈与税を納税しておきましょう」と助言を受けることがあります。
贈与税を納めておけば、例え親が子や孫名義の通帳や印鑑を管理していても問題ない(課税当局から後日「名義預金である」と指摘されない)と思っているのかもしれません。
これ、根本的に間違っています。
今回は「贈与税の申告納税」と「贈与の成立」には関係がないことについて解説します。

確かに、贈与税を納めておけば「贈与税は贈与があった場合に受贈者が自ら申告する税金であり、実際に贈与を受けたから申告納税したのだ」と言えますから、形式的には贈与があったと思われるでしょう。
実際に、税務署から贈与税の申告納税が漏れていることを理由に贈与を否定されたケースもありますから。
贈与税は課税要件を満たした時に申告義務が生じます。「課税要件を満たした時」とは、「財産を無償で取得した時」を指します。
ここだけを読むと、やはり「贈与があったから贈与税を申告した」と読めます。
しかし、昭和58年3月9日の高松高裁は、
「納税義務を負担するとして納税申告をしたならば、実体上の課税要件の充足を必要的前提要件とすることなく、その申告行為に租税債権関係に関する形成的効力が与えられ、税額の確定された具体的納税義務が成立するものと解せられる」
と判示しました。
この判決を分かり易く言い換えると、
「贈与税の申告は、贈与税額を具体的に確定させる効力は有するものの、申告の前提である課税要件(実際に贈与があったかどうか)を明らかにするものではない」
となります。
また、高松国税不服審判所は平成19年6月26日の裁決の中で、前述高松高裁判決を拠り所に、
「贈与税の申告は、贈与税額を具体的に確定させる効力は有するものの、それをもって必ずしも申告の前提となる課税要件の充足(贈与事実の存否)までも明らかにするものではない。贈与税の申告及び納税の事実は贈与事実を認定する上での一つの証拠とは認められるものの、贈与事実の存否は、飽くまでも具体的な事実関係を総合勘案して判断すべきである」
と結論付けています。
つまり、贈与税の申告納税は実際に贈与があったどうかと関係がないのです。

贈与とは「財産を無償であげる」こと。
後日「名義預金だ」等と課税当局から指摘を受けないよう、形式だけ整えるようなことをせず、極意をしっかり守りましょう。

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