ブログ「相続の現場から」

30年一括借り上げの注意点 『病院賃貸保証金返還を練馬区に命令』

投稿日:2014年9月21日

先日の新聞に、「練馬光が丘病院」を運営していた日本大学が、病院撤退に伴う保証金返還を練馬区(同病院の所有者)に求めた訴訟について、「東京地裁が練馬区に保証金50億円全額の返還を命じ、練馬区が支払いに応じた」との記事がありました。

 

日本大学は、練馬区との間で、区が所有する病院施設を30年間賃借する契約を締結し病院経営を行ってきたのですが、累積赤字が膨らんだため、途中で運営から撤退し、区に対し契約解除に伴う保証金50億円の即時返還を申し出ました。しかし、区は「30年間病院運営を行う前提で預かった保証金だから、返還するのは契約締結後の30年後だ」と主張し、日本大学が訴えていたものです。

 

注目すべき点は、『賃貸契約である限り、民法に規定する「賃貸借の期間は20年を超えることが出来ない」の民法の規定が適用される』という判決理由です。

 

昔からこの手の訴訟は多く、その度に「20年を超える賃貸借契約は無効」の判決が出ています。

 

【30年一括借り上げ(サブリース)】をうたい文句に、「相続対策の一環としてアパート建築しませんか?」の甘い囁きが数多く見受けられますが、もし20年後にサブリース会社から契約解除を申し出られた場合、例え30年間の賃貸借契約を締結していても、中途解除に伴う違約金は取れません。

当事者間で合意した契約ならば何年間の契約を結んでも構いませんが、いざ争いになって出る所に出た場合、賃貸借契約の20年超の部分は原則無効となってしまい、【30年一括借り上げ(サブリース)】を安心材料にアパート経営を考えていた地主にとって大誤算が生じてしまうのです。

30年はあくまで“営業上の誠意”に過ぎません。

 

そもそも、サブリース会社だって営利企業な訳ですから、赤字を垂れ流してまでずっと地主を助けることはありません。しかも、賃料は相場や景気によって変動するのが常であり、絶対に守られる家賃水準は存在しません。

 

「サブリース=家賃保証」と信じている地主の方が多くいらっしゃいますが、正しくは「サブリース=空室保証」です。

 

空室が多くなれば、赤字を食い止めたいサブリース会社は借り上げ家賃の引き下げを申し出ます。

「最初に約束したじゃないか」と怒っても、家賃が下がっている状況ならば、勝ち目は少ないでしょう。それが相場ですから。

 

あくまでアパート経営は「事業」です。「事業」にはリスクが伴います。

そもそもサブリースをつけないと事業が成り立たないようなエリアであれば、その有効活用は止めておいた方が無難でしょう。サブリースをつけなくても事業収支は問題ない、だけど賃貸管理の手間暇を考えたらサブリースの方が楽だな、と思ってつけるのがサブリースです。

 

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